マネーの闇 巨悪が操る利権とアングラマネーの行方 (角川oneテーマ21)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2013年1月10日発売)
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感想 : 6
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冒頭、アノニマスのインタビューから始まるが、この本、いったい何を書きたいんだろうというのが第一印象。「ハッカーの世界が”闇の世界”とつながっていることを書きたいの?」という感じ。最終章もアノニマスのインタビューで終わっている。ふ~む、よく分からん。だからしばらく積読にしていた。

著者の一橋文哉さんはペンネーム。「闇の世界」をテーマにするジャーナリストだから、本名、身元などは一切、公開していないらしい。

実は、そこにこの本の面白さがあるんだと気が付いたのは、積読状態だったこの本の、満州事変の経緯から戦後のフィクサー誕生までの歴史や、ライブドア事件の真相の経緯を読んだときから。要するに、この人の専門は裏社会。歴史を振り返っても、裏社会には金が絡む。そして現代のネットワーク時代にも裏社会があり、金が絡む世界がある。世の変化に応じて、裏社会につながる構造は変わる。だが、表があれば裏がある。そしてそこには金が絡むという構造は変わっていない。そういう風にこの本は読むんだなと思った。

満州事変のきっかけ、活躍した人たちの関係と背景、各種結社や謀略に関与した機関の話し、大物右翼たちとのつながりなどの話しはとても興味深い。久しぶりに、時間が経つのを忘れて読み込んでしまった。

ライブドア事件の顛末も面白い。堀江貴文と側近役員の宮内亮治、そして懐刀の元役員、野口英昭。投資事業組合、株式交換、そして株式分割の3セットを駆使したライブドア流錬金術は、野口が生み出したものだったが、その野口は那覇市のカプセルホテルの一室で出血多量で死んだ。警察は早々に自殺と断定し操作を打ち切ったが、これは本当に自殺なのだろうかという考察。確かに、自殺ではなくて他殺という可能性も大いにあると思わせる。そして著者は、野口の周りには多くの暴力団や闇の紳士たちが蠢いていたと指摘する。

アノニマスの話しより、この2つの話しを読むことは価値がある。この著者の本領発揮の部分だと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会
感想投稿日 : 2013年3月19日
読了日 : 2013年3月18日
本棚登録日 : 2013年1月19日

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