経済成長って、本当に必要なの?

  • 早川書房 (2013年5月10日発売)
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amazonでタイトル買い。まさに、いま、みんなが思っていることだと思う。『経済成長って、本当に必要なの?』

現代は新自由主義が跋扈し、どこの会社も、どこの国も、お金のモノサシを当てて利益を確保に動く。ヘッジファンドなんて、その最たるものじゃないだろうか。そこに違和感を覚えながらも、では、世の中一般で議論されていることってどうなのかと考えてみると、「経済成長」が大前提だ。成長し続けるということは、どういうことなのだろうか。誰だって、昨日よりは今日、今日よりは明日は、少しでも良くなっていることを望む。だけど、経済が成長し続けることって、一体何なのだろう。世界にはお金が有り余っている。次の成長先を狙って、そこに金が集中する。だけど、ボクたちはほしいものって本当にそんなにあるのだろうか。もちろん、経済発展途上国は、物質的に豊かになろうとする。でも、先進諸国の生活は、これ以上、成長を続ける必要があるのだろうか。

いやいや、先進国だって、所得格差が広がり、生活の元手であるお金を稼ぐことさえできない人が増えているというかもしれない。でも、経済成長をし続ける中で、貧富の格差が広がり、日々の暮らしに困る人がいるなんて、おかしくないか? そんな考えは、たぶん、誰でも考えたことがあるのではないだろうか。

本書の結論は、結局、最後の章に集約される。その問いはこうだ。

「そもそも、経済とは何のためにあるのか?」

ボク自身は、生活のためだと思うし、生きるために経済があるのだと思う。だけど、いまの世界はそれを凌駕し、利益を最大化するために存在している。そこに乖離がある。

著者は続ける。「私たちだけでなく、子供や孫やひ孫たちの生活の質は、今の私たちがどんな経済を築くかに大きく関わっている。働き過ぎ、楽しみを切り捨て、地球を汚し、有害食品を口にし、がんに侵されながらGDPを増やす暮らしはもうたくさんだ。働きすぎをなくし、もっと人生を楽しみ、友人を増やし、そのためのゆとりを持ち、ものはあまり買わず、環境を汚さず破壊せず、ものは増やさず、健康で長生きを楽しみ、意義ある人生を送るほうがいいのではないだろうか」。

この意見に同意する人は多いだろう。著者は「21世紀の経済」が必要だという。そして、市民として政策に関心を持ち、積極的に行動することで、世の中を変えることが必要だという。

著者の意見は本当の最後のフレーズだろう。「経済とは何のためにあるのか? それは、人々の”生命”、”自由”、”幸福”のためでなくて何であろう。私たちは、最大多数のための最大幸福を長期に渡ってもたらす経済をともに作り上げることができる。それこそが21世紀の経済であり、新たなアメリカンドリームへの道である」と。

だけど、その具体的方法をもっと議論しなければならない。そして、グローバル化する経済と企業と、政策を行う国家との乖離が生じていることも理解しなくてはいけない。「最大対数のための最大幸福」はポピュリズムに陥る可能性だってある。

かつて、1970年にローマクラブが設立され、現在のままで人口増加や環境破壊が続けば、資源の枯渇や環境の悪化によって100年以内に人類の成長は限界に達すると警鐘を鳴らした。破局を回避するためには地球が無限であるということを前提とした従来の経済のあり方を見直し、世界的な均衡を目指す必要があると論じた。だが、結果はどうであったろうか。そんなものは無視されて、欲望のままに、利益最大化をするために経済は動いているのが実情だ。

総論賛成、各論要議論、というところでないだろうか。

読書状況:いま読んでる 公開設定:公開
カテゴリ: 経済
感想投稿日 : 2013年6月9日
本棚登録日 : 2013年5月28日

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