
新型コロナが世界を覆う2020年の終わりに書かれた本。著者の佐々木さんは大学の先生でもあるため、オンライン授業を行うためにYouTube動画を作成されたそうだが、それが書籍化された本らしい。検索してみるとアップされているので、リンク先を貼っておく。
https://www.youtube.com/watch?v=VLiFmTujoVc
本書で「なるほど」と思ったのは、佐々木さんの次のことば。
-世界の三大宗教何て言うバカバカしい言い方がありまして、まるで仏教も
他の二つの宗教と同じように「世界宗教」を目指しているように捉えられ
ますが、そんなことはまったくありません。仏教は常に世の片隅にあり、
メインストリームからどうしても外れてしまう人たちを受け入れ、いつま
でもその人たちを救い続けるというのが本筋なのです。
ここに佐々木さんの仏教の捉え方が出ていると思うし、そうなのだろうと思う。当時、バラモン教世界が規定するカーストという身分差別制度を否定する形で仏教が出てきた。絶対的な絶望感の世界から、こういう宗教が生まれてきたのは、確かに救いなのかもしれない。
一方で、カーストを引き継いだヒンドゥー教は「穢れの理論」で理論武装を行っていく。その「穢れ」は感染するとまでいう。確かに、衛生環境が悪い当時のインドでは、そういう見方もあったのかもしれない。また、結果的にインドでは仏教はすたれてヒンドゥー教が支配的になった。このあたりは、「なぜ?」という疑問がわくが、社会の安定のために選ばれたシステムだったのだろう。
それにしても、著者の佐々木さんは、京大の工学部を卒業し文学部哲学科に文転して博士号を取得している。「わたしはお釈迦様のファン」と自らも言われているので、仏教が好きだったことが理由なのだと思うが、佐々木さんご自身の体験に与えた仏教感をお聞きしてみたいものだ。
- レビュー投稿日
- 2021年2月15日
- 読了日
- 2021年2月15日
- 本棚登録日
- 2021年2月8日
『仏教の誕生 (河出新書 23)』のレビューへのコメント
まだコメントはありません。