ムーミンで有名なトーベ・ヤンソンの、ムーミンじゃない短編集。
何が起こるというわけでない、若い女や、孤独な老人や、売れない芸術家などの自意識の物語。
読み終わったのがずいぶん前なので、印象を書き留めるのみとなりますが…。
お仕着せの幸せや、みんなが夢中になるばか騒ぎや、ありふれた刺激では満足できない。だって私は特別なんだからーー。という心の鎧を、着続けて着こなして確かにかっこいい特別な人もいるけれど、多くの人は凡人なわけで、あるいは逆にすべての人が特別なわけで、ふと、「あ、これ脱いでも大丈夫みたい」と気付く瞬間がやってくる。
それでもまた、寒くなったら着たり、気取りたい日には着たり、することもあるのだけれど、脱ぎ捨てた瞬間の解放感を知らずに生き続けるのはなんだか苦しそう。
「自分は特別なんじゃないか」という買い被りを、笑うことなく責めることなく、いとおしむ。それでいて「自分のような人間は掃いて捨てるほどいる」という真実に打ちのめされず、むしろそれを救いとして提示する。
なんだかそういうところに惹かれる。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ちょっと古い小説
- 感想投稿日 : 2016年12月4日
- 読了日 : 2016年5月19日
- 本棚登録日 : 2016年5月9日
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