日銀券 下巻

著者 :
  • 新潮社 (2007年4月1日発売)
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本棚登録 : 155
感想 : 11
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予測小説的側面もある。笙子が企てていたのは強い円、ドル暴落、世界の基軸通貨円、世界の中で強大な力を持つアジア。これが実現するのかは正直わからないけど、アメリカの凋落については最近の世界経済の動向を見ているとあながち突飛な予測とは言えなそう。量的緩和政策が解除される前に出された小説だから、解除は的中させていることになる。その意味で世界経済の今後の動きが楽しみになります。それから日銀の基本的な業務内容や近年の日本経済の動きも知ることができます。具体的には日銀が公定歩合を調節してマネーサプライを調整しているのは社会の教科書の中の世界であり、現実には短期金利の誘導目標を上下させたり、日銀当座預金の残高を調整してやってるんだよってことや、長年にわたる量的緩和政策が短期金融市場をマヒさせて優秀な短資マンが育たなくなったということも間接的に描かれている。でも、一番おもしろいのは笙子と中井の恋物語かもしれない。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 小説/文学
感想投稿日 : 2008年2月15日
本棚登録日 : 2008年2月15日

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