中学3年生の理子には人には言えないことがある。
ひとつは〝誰かを傷つけてしまうのではないか〟という恐怖を抱え、その自己治療として身近な人を殺す様子を日記に書いていること。
二つ目は、小学6年生のときに不思議な関係で結ばれていた友人、加奈子を殺したこと。
これは事故として扱われたが、事実は理子の中で埋もれることなく生き続け、これが加害恐怖という病を発生させている。
理子の家族は父親を亡くしたことで壊れた。
母は一家の大黒柱の重圧と仕事に疲れ果て心を病み、兄は教師としての仕事をしながら理子と母親を養っている。自然と家事の担当をもつことになった理子は、大切にしていた部活動を休止していた。
誰かを傷つけることを恐れて、目立たないよう息を潜めて生活していた理子のまわりで、しかし波風は立ち始める。
近くの河原でホームレスが焼き殺され、その犯行があまりに自分の綴った日記と重なったために、これを盗み読んだ兄か、記憶がないだけで自分が殺したのではないかと考える。
そんな折に、彼女のもとを訪ねた新入生がいた。
小学6年生のときに理子が殺した加奈子の弟、悠人は加奈子に似た美しい顔を持ち、理子に「姉の死の真相を知っています、バラされたくなければ僕の父を殺してください」と持ちかける。
不審な兄の行動。続くホームレス殺し。クラスメイトからの攻撃。部活動での乱入者。母親との軋轢。
様々なものを避けて、最善を尽くしたつもりだったのに。
彼女の殺人計画は上手くいくのか?兄の行動の意図は?
物語の終わり、物事はうまくいくこともいかないこともあるけれど、このいくつもの騒動を抱えて彼女はどうやって逃げるのか、戦うのなら正しい方法でなくてはならない理由があるということを知った。
やっぱり私は男性作者の書く女の子が少し苦手だ。
なんとも言えない模造品のような手触りがする。
もちろんそうじゃない作家さんもいるけれど、今回はそれを感じた。
同じ年代の子が読んだらまた違う感じ方をするのかも知れない。
- 感想投稿日 : 2020年7月26日
- 読了日 : 2020年7月26日
- 本棚登録日 : 2020年7月26日
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