里親と暮らす14歳のジェマは、重度の脳性麻痺で、体を動かすことも話すこともできないため、自分の思いを伝える術を持たないまま成長したが、周りの人からは一方的な聞き手として秘密を打ち明けられることも多かった。ジェマは、彼女の介護ヘルパーサラの恋人ダンから、彼自身が、近所に住む青年ライアンの殺人事件の、未だ見つからない犯人であるとほのめかされるが、それを他の人達に伝えられすもどかしく思っていた。外見は好青年であるダンの正体をサラに伝える方法を模索しているとき、ママとサラの関係がぎくしゃくすることが増え、サラは突然行方不明となる。
コミュニケーションの手段を持たないために、意思表示ができなかった少女が、それを獲得し、自己表現する喜びを知り、周囲を動かしていくサスペンス仕立ての物語。
*******ここからはネタバレ*******
しっかりとインプットし、考える力もあるのに、アウトプットする方法のない無力感が、サスペンスであるために増幅されて感じる。
自己表現できないことで、周囲から無力な存在と扱われがちな様子も描かれ、胸が痛むが、家族を含め、周囲の協力者が、愛情深く忍耐強く彼女や、他の里子と接しているのがとても救いになっている。
ジェマの双子の姉ジョディは、まだ同じ14歳なのに、一人でジェマと会いに来たことに驚く。養親がいるのなら、せめてドアの外まででも付き添わなかったのか?それとも英国はそういう国なのか?????
幼い頃に生き別れた肉親と合う、しかもその相手が、自らコミュニケーションが取れない状態とあれば、並大抵の勇気ではないと思うのだが。
ジェマが話す術を手に入れたことに安心するとともに、多くの人たちが自分の言葉を伝える方法を得て欲しいと思える話。
199頁から200頁の初め。
パパとケイトは遺体確認のために出かけている筈なのに、いきなりケイトが「ママやパパといっしょにキッチンテーブルを囲みながら」話をし始めるのに違和感。「帰宅後」くらいつけておかないと、場面転換がわからないのではないか?
内容は平易だけれど、殺人や誘拐・拉致などの犯罪を扱っているので、高学年以上にオススメします。
- 感想投稿日 : 2020年3月10日
- 読了日 : 2020年3月10日
- 本棚登録日 : 2020年3月9日
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