その声は、長い旅をした

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  • 国土社 (2019年10月10日発売)
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感想 : 2
3

バリバリの音楽教育ママの下でうたう中学1年の開の所属する少年合唱団に、素晴らしい声を持つ同い年の翔平が入ってきた。開はライバル心を掻き立てられる。町はずれには行くことを禁止されている森があるが、そこの廃墟「礼拝堂」では、美しく声が響くことを聞かされていた。ある日、好奇心に勝てずそこを訪れた開は、うたう翔平ともう一つの異様に美しい声を聞く。翔平は、そこでうたうと自分の声じゃないみたいにきれいに聞こえると言うが、開が確かめようとすると森がざわめき、地面から突き上げるような衝撃が怒った。

どんなに努力しても逃れられない変声期に怯えながらも、美しい歌声を追求する少年たち、うたうことで生きてきたコタロウ、大昔に海を超えた少年たち、形を変えながらも信仰を守り続けた島の人たちを描いた物語。



*******ここからはネタバレ*******

翔平の先祖コタロウは、歌声の美しさを見込まれて天正遣欧少年使節に「こっそり」同行させられた。ローマに着いたものの教皇の前で歌うことは叶わなかったが、そこで出会った少女が、弟の聖歌隊に紛れ込ませてうたわせてくれた。コタロウは、使節団から抜け出して自力で帰国した。その後コタロウの住み着いた島が隠れキリシタンの習慣をずっと受け継いでいて、その子孫たちは代々美しいボーイソプラノを持っていて、子孫の翔平の歌う歌が、コタロウの島に今も残るオラショと同じ起源を持っていた。翔平は、引っ越してきた町のはずれの森でその声と出会い、コタロウのペンダントまで拾うのだ。
……という話なのだが、ちょっと出来すぎ感がありすぎる。

不思議なのは、前半部分。
森の中の「礼拝堂」でうたうと美しく声が響くのは、コタロウが一緒にうたっているからだと思われるが、それではなぜ気分が悪くなるのか?子孫ではない先輩もそこでうたえたのに、開が入ろうとしたときに怒ったのはなぜなのか?コタロウは、子孫の翔平を見つけたから、「礼拝堂」の外でもうたえるようになったのか?
森で着いた泥が、森の外に出ると消えたのはなぜなのか?

霊の存在を思わせるオカルトチックな描写は、後半なくなり、最後には気持ちよく翔平を助けたりします。

教育ママの開の母も理解し難い。
皆が嫌いな「のどにいい」手作りジュースを張り切って作るほど空気が読めないのに、「過去から響いてくる声に耳を澄ますの。その声にこたえて、あなたたちもうたうのよ。わかっても、わからなくても、それしかないでしょ」と言う。これわかったらすごいですよね。

開が遣欧使節の少年たちに思いを巡らせて少し納得がいったときに「酢醤油がぴちゃっとはね、テーブルのすみに落ちて光った」描写は、気持ちよくないものなのでは?

これは好みだと思うですが、私には、読点が多くブツブツと切れる文体が読みにくく感じました。

主人公は13歳ですが、内容的には中学年から読めます。でも、変声期前の男の子だともっと気持ちがわかるかも知れません。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 児童書
感想投稿日 : 2020年1月19日
読了日 : 2020年1月19日
本棚登録日 : 2020年1月19日

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