NHKスペシャル 日本人はなぜ戦争へと向かったのか 上

制作 : NHK取材班  NHK取材班 
  • NHK出版 (2011年2月23日発売)
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本棚登録 : 218
感想 : 25

「なぜ戦争に向かったのか」いう質問は、2種類の解釈ができる。
ひとつは「なぜ勝てそうもない戦争に向かったのか」。もうひとつは「なぜ戦争という手段を選んだのか」。2つの問は似ているようで全く違う。答えも全然違う。

本書は「なぜ勝てそうもない戦争に向かったのか」について答えようとしている。無謀な戦争を大日本帝国の判断ミス、決断ミスと捉えて、その原因を突き止めようとする。それはそれで面白い。外交的孤立、ジャーナリズムの迎合、決断するリーダーを持たない統治機構、といった「戦犯」が分析される。もっとも最後の一つは間違いだとぼくは思う。決断するリーダーがいたナチスだって似たような経緯をたどっているのだから。
だが、「なぜ勝てそうもない戦争に向かったのか」という問いかけは、戦争の是非を語らない。問題は戦争をしたことではなく、戦争に負けたことだからだ。もしあの戦争に勝っていたら、本書は「日本人はなぜ戦争に勝てたのか」というタイトルだっただろう。

だが、戦争に疑問を持つ人の多くは、「なぜ勝てそうもない戦争を」ではなく「なぜ戦争を」こそが知りたい。なぜ大日本帝国は、わざわざ海を渡って近所の国に攻めこまなければならなかったのか。なぜ何百万の人々を殺し、また殺されなければならなかったのか。自分が生きてきた数十年の長さを思い、その数百万倍の失われた人生と可能性を考えるとき、あれは仕方ないことだったのだと片付けるのは難しい。
ぼくも知りたいのだ。なぜ?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史・ドキュメンタリー
感想投稿日 : 2016年3月30日
読了日 : 2016年3月22日
本棚登録日 : 2016年3月10日

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