先日読んだ「心を操る寄生生物」といい、本書といい、体の中にいる他者(共生、寄生のどちらも)の影響は想像以上に大きいのかもしれない。最初は疑似科学のたぐいなんじゃないかと眉につばして読んでいたが、糞便移植という言葉は聞いたことがあるし、体内細菌群(=マイクロバイオーム)のバランスを取り戻すことで、病気が治ったり症状が軽くなったりする例が数多くあるという。それも下痢や感染症ばかりではなく、多発性硬化症みたいな難病や免疫性疾患、肥満にも関係があるらしい。
自閉症、うつ病といった精神疾患との関係はもう1段の飛躍が必要でにわかには信じがたいが、これらの症状も脳という器官の不調と捉えればありうる話だ。
虫垂がマイクロバイオームのストック器官なのではないかという説にはびっくり。
ぼくらは体内に棲んでいる細菌が大切なものだとは思っていない。どっちかといえばいないほうがいいんじゃないかと思っているし、せいぜい、乳酸菌とか、ビフィズス菌とかを飲んでも飲まなくてもいいサプリメント扱いしている程度だ。
でも牛は食べた葉っぱを共生菌の助けを借りて消化しているし、シロアリは共生菌なくしてはシロアリをやっていけない。彼らにとっては共生菌は必須の相棒であって、いなかったら生きていけない。だとすれば人間も体内細菌に依存していたとしても不思議ではない。だいたいみんながみんな、腹の中に1.5kgの微生物を飼っているのに元気にしている、ということ自体が、連中がいることになんらかのメリットがある可能性を証明しているとも言える。
マイクロバイオームがそれほど大切なものだとすれば、敵味方関係なく体内の細菌群をなぎ倒す抗生物質はかなり危険な両刃の剣だ。変なものばっかり喰っていたら細菌も困るだろうし、行き過ぎた清潔志向もヤバそうだ。
この分野の研究は始まったばかりだ。現在はマイクロバイオームのバランスと、いろいろな健康の指標に相関関係があるらしい、ということがわかってきている段階だ。今後の研究で、マイクロバイオームが「どのようにして」健康に影響を与えるのかがわかってくるかもしれない。その過程で、アレルギーや自己免疫疾患、ガン、精神疾患などの、感染症ではない病気の本当の原因が解き明かされることになるのかもしれない。
見届けないとな。
- 感想投稿日 : 2018年3月25日
- 読了日 : 2018年3月13日
- 本棚登録日 : 2018年3月13日
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