お伽草紙 (新潮文庫)

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本棚登録 : 2116
レビュー : 160
著者 :
こんさん  未設定  読み終わった 

人間失格、桜桃、晩年、走れメロス、御伽草子となんか変な順番で太宰文学をよんできて、いちばん楽しかったのがこの本だった。「晩年」を読んでいるときも、なかなか世間のいう「太宰は暗い」という批評は嘘だ、と思ったが、御伽草子をよんで本当にそう思った。「晩年」では、ほんとうにこいつ死の間際にいるんか、と疑うほどの快活とした作品に思えたりしたのだ。
昔話に題材を取る作品はいままで読んで来たが、太宰にかかるとそこに笑いの要素が色濃く追加される。しかしこの作品が書かれたのは第二次世界大戦中だというのには驚いた。苦境の時代にあり、あれだけ大衆文学然とした娯楽読み物を書けるとは、なんていう頭してやがるんだと思った。だが、むしろ苦境にあったからこそ、あれだけの笑いを挟む必要があったのかもしれないとも思う。「晩年」の時もそうだが、死が近いときにこそ、道化という最後の人類に対する求愛の手段に訴えてしまうのが太宰なのだろうか、と。彼が見せる道化の裏に、此岸を見つめる彼の瞳があるのだ。この本は、道化と厭世と2つの側面を併せ持ちながらも、どちらの読み方もできる、太宰の最高傑作であると私は思う。

レビュー投稿日
2013年3月15日
読了日
2013年3月15日
本棚登録日
2013年3月5日
3
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