暑くて寝苦しい夜にこんな一冊はどうだろうか。
大正から昭和にかけて執筆された
怪奇小説集を集めたベストセレクションだ。
もっとも13篇もの短編の中で
私の知っている作家や作品はほとんどなく、
お目当ての江戸川乱歩のみだったので、
それを中心に書いてみた。
● 「芋虫」 江戸川乱歩作
傷痍軍人として帰国した夫に献身的に使える妻の苦悩を綴ったものだ。
砲弾の破片をもろにうけた夫は
手足がふっとび耳は聞こえず口もきけず、
胴体だけの異様な姿となっていた。
それでも傷だらけの頭部の中でも眼だけは正常で、
口に鉛筆をくわえてカタカナは書けた。
かろうじて生きているだけの夫との生活は、
妻にはだんだんと重荷になってきていた。
妻の心中を察した夫のとった行動とは・・・・。
夫を憐れと思いながらも、
介護にあけくれる毎日は妻の心を疲れさせていった。
その葛藤が、夫の怪我をするまでの回想とともに
暑苦しいほど濃厚に書かれていて、
ぐいぐいと引き込まれて読んでしまった。
人間はなんと精神的にも弱い生き物だろう。
その中でも夫が最後にとった行動は、妻への愛の証だったのだろうか。
どんな姿になっても、
人を思いやる心を持っていた夫はやはり人間だった。
なんだか、切ないが・・・。
あらためて読んでみると、
夫の憐れな姿の描写は、ゾクッとくる。
やはり、江戸川乱歩は素晴らしい。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2013年8月24日
- 読了日 : 2013年8月24日
- 本棚登録日 : 2013年8月24日
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