こころの中にダイブ!
えー!そんなことできるの?ってファンタジー感を匂わせているが、中身はしっかり医療ヒューマンドラマ。
主人公の月野ゆん(ちょっと変わった可愛いらしい名前)は、潜入心理士といって心の中の核に潜入し絡みをほどくことにより希死念慮を軽減することを目的とした自殺を予防する専門職。
ゆんは先輩、医師達と協力して患者の絡みをほぐしていく、その過程と成長、心の葛藤が描かれている。
希死念慮という重いテーマを「こころの中にダイブする!」現実離れしたファンタジー感を出すことで暗くて重いイメージが払拭され読み易く、蓮さんの気さくさが、ゆんや本城を際立たせている感じがした。
こころの中に入るには患者とシンクロしないとダメとか時間制限があったり、ちょっとエバァンゲリオンが頭をよぎってしまった(笑)
ただ、人の心の中に入る技術が悪用されたらと思うとちょっと怖いなぁ。核を壊されたり、愛情や大切な思い出とか、死にたい気持ちだけでなく好きとか嫌いとか、いろいろ操作できるようになったりすると大変だ。
潜入心理士の良いところは、死にたい気持ちが可視化できることかな。希死念慮を持っていないと言っていても実際思っていることが違う時や、相手の心が傷ついているのも分かるから、あっ今この人に手を差しのべれば力になれるって行動できる。
九章の「希望」で蓮さんが言った言葉「誰の役にも立たたないで生きていても全然いいと思う。意外と気付いていないだけで、皆だれかの支えになっていると思うよ。」自分が気付けていないだけで誰かを支えていると思うと少し気が楽になるよね。
あと、表画が綺麗で良かったな。透き通った水の上に白衣を着た女性が立って、手のひらの光の玉の廻りに無数の光の糸が繋がっている。希望の光のようで。(結構、表画につられて買ってしまう)
著者の秋谷りんこさんはこの本のことを、卯月が「ささやき」だとしたら月野は「叫び」です。と言っていた。少しでも多くの人が本書を読んで「月野の叫び」が心に響けばば良いなと思った。
余談ですが、心の場所って何処にあると思う?
アリストテラスは胸(心臓)、医術の祖ヒポクテラスは頭(脳)、と考えていたそうです。私も頭かな?
- 感想投稿日 : 2025年3月30日
- 読了日 : 2025年3月30日
- 本棚登録日 : 2025年2月23日
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