この地獄を生きるのだ うつ病、生活保護。死ねなかった私が「再生」するまで。

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レビュー : 23
著者 :
あめさん    読み終わった 

「死にたくなった」人の特効薬になる本を探して購入。

ワーキングプアから、精神疾患をきたし、生活保護になる至った作者の体験がつづられている。

私は、本書を「死にたい」気持ちを解決するためではなく、「死にたくなった」人の気持ちを知るために購入したのだったが、メンタル系の書籍の中で最も心に響いたのは本書である。

そもそも、本を書く人なんて優秀ではないか。「死にたい」を理性と賢明さで克服した人間からのアドバイス。有能であるが故に心に変調をきたし、結果として有能な活動を行っている人間。ルサンチマンと呼んでもらって構わないけれど、どうしても自分や大多数の人に比べて境遇に隔たりを感じてしまう。

対して、著者は確かに本を書いているが、経緯は親近感を感じる。短大を出て就職した先が、ブラック企業だったのだ。そして、生活保護というセーフティネットに引っかかるところまでなるべくして落ち込んでしまった不条理とも言える境遇である。

しかし、先に賢人たちを強者だと罵ったあとに、著者の弱者としての立場に哀れみを感じて、それがまた、自分に快楽として作用しかかるのを感じた。著者は私よりも、ずっと強く、ずっと立派な人間である。この立場の境目は動的で連続的であることを忘れてはならないと肝に銘じた。

本書で気づかされたこと、
私たちは、仕事をしたくない、したくないと日々口にするが、仕事をすること、つまり社会を回している感覚というのは自分の存在意義に直結する。そして、そうできない、やむにやまれぬ理由で普通でいられず苦しんでいる人が、多くいるということを認識しなければならない。

また、私は、生活保護を受ける人達を恥ずかしいと思ってきた。しかし、本書で追い込まれた人達の立場を知り、責めるべき理由なんてないことが分かった。生活保護は不運な人を救う日本人の良心ではないだろうか。

最後に、これこそが「死にたくなった」人に必要な考え方ではないかと感じた著者の言葉を引用したい。
“だけどまだ、人生の途中だ。これから先も失敗したり、絶望したりするかもしれない。けれど、それはすべて必要なことなのだ。私はこのままでいいのだと思った。”

過去と未来の悲しみと苦しみをひっくるめて人生を全肯定すること。これが、「諦める」でもなく、「前を向かせる」でもない、過酷な境遇から復活を果たした著者が語る至言である。

レビュー投稿日
2020年7月19日
読了日
2020年7月19日
本棚登録日
2020年7月19日
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