濃い灰色の小説。
忙しくシステマチックで非効率的なお役所仕事の一方通行に抗う難しさ。
それは役所のみならず、そのシステムを疑わずに受け入れている人々に抗う難しさでもある。
システムから外れると物珍しがられ、強要され、葬られる。
未完の小説ということだが、思いもよらずシステムの別の内側から目に止まったその後はどうなったろうか。
あるはずのない書類の存在に困り果てた従僕がその書類をなかったことにしたまま、事態はこれまで通り進展しないのだろうか。
あるいは万に一つの出来事に遭遇した役人がその後もKの幸運な味方になるのだろうか。
人々はKを含めて思いやりがなく不幸を感じている者ばかりだ。
イレギュラーに遭遇した役人のみ、なんと輝いていたことだろう。
嘘の順調な循環に人々は気付かぬうちに疲弊している。
濃い灰色の小説。
読後感はそれに尽きる。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2014年8月9日
- 読了日 : 2014年8月9日
- 本棚登録日 : 2014年8月9日
みんなの感想をみる