ロカ

著者 :
  • 実業之日本社 (2005年4月17日発売)
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本棚登録 : 192
感想 : 30
4

中島らもの雑誌連載中に急逝のため絶筆となったものを
亡くなった後に未完成のまま単行本で出版されたもの。
だから「よれよれだったのに、絶筆だからという
理由で出された本だったらどうしよう」
と思って、出てしばらくしてから読んだらいい本だった。

新宿のホテルに一人住まいする68歳になる作家、小歩危ルカの
ロックでパンクで反社会的なようでまっとうでクールでアホで…
「近未来私小説」と書かれているように、
中島らもの今までとこれからが
詰まっているような小説

らもさんはもう病気とか薬とかで、年々
「よれよれよれ」となっていってるようで
対談とか本人が喋ってる類の本を色々読んでいても
もう「イタタタタタ」と言いたくなるくらい
「こけて顔面強打した」だの「大やけどしてずるっと剥けた」だの
いう話が多くなり続けていたし
一読者としても「ホンマにもう、何してんねん」と
心配したり、それでももう冗談かどうかもワカラナイ無茶な話に
笑ってしまったりしていた。そういうあれやこれやを受け止めてくれる
周りの人にもとても恵まれていたんだろうと思う。
ご本人は「それはあれやな、オレの人柄や」と言いそうな気もしますが…


ただ色々あっても最後まで
「ヘンにまともに立派そうなこと」とか
そういうことは言わなかったから
ぐちゃぐちゃなことをしてても好きな作家だった。


それでも絶筆となった本が、内容がよれよれだったりしたら悲しい…
淋しいな~っ、と思っていたのだけれど。
かっこよかったし面白かった。
読み始めたらもう、絶筆とかそんなことも忘れて
夢中で読んでいて
途中、のはずがそこで終わっていることに
ホントに「あっ・・」と絶句した。


途中までで、もう続きが読めないのが残念。
それであんな「カッコイイじじい」になったらもさんが
見られないのも。

でも、やはり死後出版された対話集のタイトルが
「なれずもの」

「みんな何かになりたくてなられへんかったから」
という意味でのタイトルらしいけれど、
そういう人なので
途上でポッと消えてゆくさよならも
それでええねん
ということかもしれない。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2014年6月9日
本棚登録日 : 2014年6月8日

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