絵の教室 カラー版 (中公新書 1827)

著者 :
  • 中央公論新社 (2005年12月1日発売)
3.62
  • (15)
  • (24)
  • (31)
  • (5)
  • (1)
本棚登録 : 415
感想 : 34
4

安野光雅の新書、しかもカラー版。手に取ってみて、すぐに購入に至った。ところがしばらく、積ん読になっていた。本棚にあるときは、読んでほしいという気持ちが、背表紙を通して伝わってきていた。こちらも期待感が募った。

果たして、読んでみて、どうだったのか。絵とは、創造性のなせるものである。遠近法を使った対象物の写し取りの実験が示されている。反証である。絵は、画家が感じたことが投影される。写真には、その余地が無い。自画像の実験でも、同じことが言える。人物像とは、瞬間、瞬間の記憶の総合が描いている。このため、光の明暗などにこだわり過ぎる必要は無い。

創造性の最たる例として、著者はゴッホを挙げる。荒れ模様の空を舞う烏と麦畑、では、麦畑に触発された画家の情熱が、荒々しいタッチという筆跡として残された。表現されているのは、ゴッホの心象なのである。

かくいう私の感想もまた、おおげさに言えば、私の創造が込められている。単なる著作内容の抜粋ではなく、私というフィルターを通して、語られている。それでいいのだと、感じさせてくれるメッセージが本著にはちりばめられていた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 芸術
感想投稿日 : 2014年8月6日
読了日 : 2014年8月6日
本棚登録日 : 2014年8月6日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする