これは、おそらく良書です。
おそらくとしたのは、現国で正解を導き出す具体的ノウハウがあるのを初めて知ったのと、それでも私が完全に理解納得できたわけではなかったから。
現代国語の問題で毎回ほとんど満点を取る生徒が存在するという事実は、問題に対する解答が帰納的に導き出されることを意味する。つまり、数学のように理路整然と。
中学生にしては、高橋和巳全集を読んでいたりと、おませな文学少年を気取っていた当時の私は、恥ずかしながら現国の点数はそれほど良くなかった。
まず、文章を批判的に読む癖がついていたので、問題文の内容が絶対的に正しいのかというところからつまずいていた。さらに、「この場面で主人公の気持ちは?」などという問題は、私の気持ちを優先し回答する始末。
たかが試験問題なのに作者のロジックを素直に受け止めることが難しい屈折した生徒でした。
本書を読んで極端な話、内容が破綻していても賛同し難いロジックであっても、その不完全な文章を前提に読み解くのが肝だとは理解出来ました。もちろん、筆者はそこまで言っていませんが、こんな記述があります。
《設問が本文理解を試す問題であることから、本文は自分の主観が混入しないように客観的に読まなければならない。小説ならば主人公に思い入れたり、同情したりせず、冷静に観察するような気持ちで読むこと。評論では筆者の意見を受け入れる立場を堅持し、批判や共感などの感情的な態度に流されないように心がけることを老婆心ながら注意しておこう。》(P28)
本書の最初の方に書かれていた初歩的決まりごとを頭でわかっていても実践しようとしなかったのが問題だったのは明らかですが、公の試験で出す以上、出題者の選択する文章も完璧なものであってほしいと思うのは、負け犬の遠吠えでしょうか。
また読後改めて思ったのは、模試テスト終了後に、正しく解答を導くノウハウを先生が解説すれば、本書の様な解き方テクニックを身に付けられたのではとも。少なくとも、私の通った公立中高ではそうした試みはありませんでした。
PS.
ちなみに、筆者は河合塾の名物講師です。
一応本書の問題全問解答してみましたが、正解率70%ほどでした。トホホ、進歩ないね。
- 感想投稿日 : 2024年7月20日
- 読了日 : 2024年7月20日
- 本棚登録日 : 2024年7月20日
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