SHOE DOG(シュードッグ)

4.05
  • (165)
  • (183)
  • (86)
  • (19)
  • (6)
本棚登録 : 1941
レビュー : 194
制作 : 大田黒 奉之 
mysterymanboさん  未設定  読み終わった 

1962年から1980年までのナイキ創業の経緯を遅れること36年、2016年に出版したのは、現役関係者の名前が出てくることに配慮したためかとも考えたが、「謝辞」で引退後に出版社に自伝執筆を勧められたこと、その後執筆の勉強もしたことが書かれているので、単なる書く気になるタイミングの問題だったようです。
本書ではナイキというもう1つの自分の分身を存続させるために四苦八苦する姿が赤裸々に語られています。
そのエネルギーの根源は、もちろんシューズへの愛情もあったのでしょうが、それ以上に本書から伝わってきたのは自分の家族を路頭に迷わさせたくないという現実問題だったということを正直に書いている点に共感できました。
ナイキが少なくとも3度の経営危機を乗り越えられたのも、人との出会い、信頼関係、運という経営学とはまったく関係のない要素だったのも興味深い。

最初のクライマックスは1972年のナイキブランドが誕生した年前後のストーリーです。
オニツカタイガーの販売代理店として開始したブルーリボン社が契約打ち切りを通告してきたときの、口下手のフィルが社員に向けて語ったスピーチ(P296)は感動的です。(後に、裁判沙汰になった時、社長の鬼塚氏はこの件は知らなかったと証言し、必然的に担当のキタミ氏の独断だったような経緯になっているが、本当にもしそうなら越権行為
の方が問題になりそうだが・・)

2つ目のクライマックスは、捨てる神あれば拾う神あり、日商岩井が救世主として現れ、さらに不愛想でアイスマンとあだ名された財務のイトー氏が、「みんな数字のことばかりに気を取られ過ぎます」と財務マンらしくない言葉でフィルの窮地を救った場面です。(P387)

最後に経営者としての機転を感じたのは、韓国で違法コピー(相変わらず中国やこの国はマネばかり)が出回り始めたころ、あまりに精巧なコピー振りにこんな手紙を違法コピー工場主に書いています。(P442)
「製造を中止しなければ100年間刑務所に入れてやる、ちなみにうちで働いてみる気はないか?」

ナイキの成功は、やはり経営者がランナーで自分の好きな分野で起業したこと、例外はありますが比較的正直で人情的な日本企業と組んだこと、プロスポーツアイコン(ジョーダン、コービー、タイガーなど)と専属契約を結べたこと、良い商品を供給し続けたことに尽きるようです。
経営者モノでは、「ハードシングス」とそん色ない面白さでした。

レビュー投稿日
2019年7月22日
読了日
2019年7月22日
本棚登録日
2019年7月22日
2
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『SHOE DOG(シュードッグ)』のレビューをもっとみる

『SHOE DOG(シュードッグ)』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。

いいね!してくれた人

ツイートする