私の苦手な経営者の一人、柳井正氏の推薦という点もあり、なかなか読まなかった1冊でした。が、これは素晴らしい本です。
特に、共著として名を連ねているアルヴィン・モスコー氏というベストセラー作家の筆のさえもあり、読み物としても面白く仕上がっています。
経営者としてはまさにたたき上げのジェニー氏の体験談からくるエピソードは説得力があり示唆に富む。
例えば、事実にも種類がある・・
表面的な事実(一見事実のようにみえる)、仮定的事実(事実とみなされている)、報告された事実(事実として報告された)、希望的事実(願わくば事実であってほしい)などはほとんど事実ではない。(P108)
第6章の「リーダーシップ」、第7章「エグゼクティブの机」、第8章「エゴチスム」などは現場を知り尽くした知恵とでもいうべきものでとても得るところが多い。
第12章「取締役会」は1985年の初版以来、本書で指摘された問題は35年間未だに解決されないままで、多くの経営者には耳の痛い話だと思われる。
「取締役会のメンバーに支払われる報酬額も再検討されるべきかもしれない。もし彼らがその報酬に依存しているのであれば、どうして自主的にふるまえよう。たいていの取締役の報酬は、それを得るためになされる働きに対しては高すぎ、なされるべき働きに対するものとしては低すぎるように思われる」(P274)
第13章「結びとして」でのまとめ(P297)も必読です。
そして、本書のはじめにとあとがき(付録)で、柳井氏の解説が展開されるわけですが、その文章には「僕は今、売上高1兆円構想の設計図を描いている」という言葉がある。2004年発行から15年たった今、売り上げ高は2兆円に迫ろうとしています。本書を教科書にした経営を愚直に行った結果ですので、これほど頼もしい宣伝効果はないでしょう。
とはいえ、故人となったジェニーン氏の人柄は知る由もありませんが、なぜかジェニーン氏となら一緒に働きたいと思うが、柳井氏とはちょっと無理というのも読後の正直な気持ちです。
- 感想投稿日 : 2019年8月9日
- 読了日 : 2019年8月9日
- 本棚登録日 : 2019年8月9日
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