孤島の鬼 江戸川乱歩ベストセレクション(7) (角川ホラー文庫)

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本棚登録 : 1046
レビュー : 105
著者 :
annamachizawaさん love knows no bounds   読み終わった 

2度目のカナダの冬に読んだ。2009年夏の衝動買いシリーズからの一冊である。
これの直前に「帰らざる夏」を読んで、色々精神的にうわーって興奮状態だったから、「孤島の鬼」の威力も相乗効果で半端無かった。

以下、当時の日記から抜粋。日本語がおかしいのは今も昔も変わらない。(反省!)


『まずは昨日との作風の違い。勿論、時代も傾向も何もかも違うのだが、はやり「大衆文学」「娯楽」という要素の大き過ぎるほどの威力を痛感した。
なにせこれはミステリ兼冒険ストーリーなのだから。
久々に、横溝正史作品を読んだ感じがした。不気味な登場人物や極悪非道な魂胆など、私を怖がらせながらも惹き付けて病まないあの俗っぽさ。
そしてもちろん不純な動機もある。
諸戸の心が痛い。私にとっての最大の悲劇は彼であった。
最後の一行に、どうして心をむしり取られないでいられようか。
ストーリーが何より、諸戸の歪みと純粋さとそしてすべてが、どうしようもなく「人間」を物語っていると感じた。倒錯した愛がなんだ、同性愛がなんだ、彼は一番、鬼の中で人間ではなかったのか。
主人公の蓑浦も、正常な人間であった。しかし彼は、精神や感情といった面ではあまりにも受動に徹していて、作中の「モラル」「正常」の権化一辺倒であったにすぎない。
蓑浦はあまりにも、中心人物でありながら、理想の「語り部」でしかなかった。
人の内なる欲望、原始的な欲求、そして理知に富んだ「人間」でしか制御できない愛と純粋、それ故の歪み、諸戸こそがすべてを包容し、何度挫けても立ち上がった、輝かしい人だ。私は彼の中に、希望を見た気がする。何の希望なのかわからない。だが、違っている、正常でない、おかしい、と言われそうなほどの彼の愛を、私はそれでも評価したい。否、評価せずにいられようか、これほどの「人間」らしさを。
だがしかし、世の中とは残酷だ。結末は、全く持って話に溺れてそれこそ八幡の薮知の状態で、当初私は驚いた。だがこれは避けられぬ運命だったのだ。ナラティブがどうのこうのより、それよりもっと大きな、著者のいた時代という海流の仕業である。
悲しい、悲しい、世間が憎い。
話の間はずっとそうだったが、最後の最後で諸戸に本当にすべて持ってかれた。
これほどに、いじらしい人がいただろうか。
こんな人を、切り捨てざるを得ない状態に追い込んだ世間が憎い。それでも最後まで諸戸は戦ったのだ。心の内で、一人で、誰ともなく戦ったのだ。彼はその心を、その愛を貫き通したのだ。そんな彼を、部外者(読者)である私が、愛さずにいられようか。
これは私が彼に対して異性であると同時に、今の現代社会の中で読み終えたからだろう。
だが、俗物的なこの小説に、ここまで感銘を受けるとは思わなかった。

またしてもえらく感情的になりすぎているが、本当に、諸戸の為に泣きたい。

思ったよりグロくは無かったけど(横溝作品で見知ってるので)、嫌な人は嫌がるかな。それでも、私みたいな妙に斜め上の解釈をする人には、オススメ。』

レビュー投稿日
2013年4月15日
読了日
2009年12月21日
本棚登録日
2013年4月13日
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