壊れやすいもの (角川文庫)

  • KADOKAWA (2019年6月14日発売)
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本棚登録 : 302
感想 : 10
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女性が忽然と消失した謎めいたサーカスの物語「ミス・フィンチ失踪事件の真相」、ナルニア国物語に登場する少女のその後「スーザンの問題」、女の子に話しかけたい少年の純真を描く「パーティで女の子に話しかけるには」など。
儚くグロテスクな小説や詩31篇を収録。


作家・脚本家でも知られるニール・ゲイマンの短編集。
幻想小説的な雰囲気が強めですが、ホームズ×ラヴクラフト世界の「翠色の習作」やピカレスク小説風の「形見と宝」、ホラーやSF色の強いものなどもあり、バリエーション豊富でミステリアスで残酷な話を楽しめます。

個人的に気に入った話は、作者が娘の誕生日に送ったという「サンバード」。何もかも食べつくしてしまった美食クラブメンバーが、未知の食を求めてサンタウンのサンバードを食べに行く話。わかりやすくおもしろい。
「よい子にはごほうびを」も、子どもの頃のあこがれと痛みを思い出して何だか切ない。

「スーザンの問題」や「谷間の王者——『アメリカン・ゴッズ』後日譚」など、他作品ありきの話も収録されているので、十全な状態でこの本を楽しめたかというとそうは言い切れないですが、それでも独特な世界観が楽しかったです。

でもこの本、こんな可愛らしい表紙で、童話めいた幻想小説集を想像していたのに、中身は普通にグロテスクだったり残酷だったりするので、なかなか表紙詐欺感が強い……。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 短編集
感想投稿日 : 2024年11月3日
読了日 : 2024年11月3日
本棚登録日 : 2024年11月3日

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