お孵り (1) (角川ホラー文庫)

  • KADOKAWA (2019年10月24日発売)
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感想 : 26
4

主人公の佑二は、結婚の挨拶のために婚約者・乙瑠の故郷の村を訪れ、そこで異様な儀式を目撃する。その村は、生まれ変わりの伝承があり、独自の神を信仰している閉鎖的な場所だった。
以降村からは距離を置いていた2人だったが、乙瑠の出産の為やむを得ず村を再訪。だが、生まれた子供は村の神、「タイタイ様」として囚われてしまう……。

生まれ変わりの伝承と独自の神を信じる閉鎖的な小村を舞台に、その伝承にとらわれた妻と妻子を守りたい夫の悲哀と惨劇を描くホラー小説。
民俗学×信仰×ホラーと個人的に好きな要素が詰め込まれており、楽しんで読めました。
作中の村では、生まれ変わりを信じているが故、死というものがかなり軽く扱われています。身内が死んでも、信仰が厚ければまた生まれ変わってくるから、と。そんな死生観の違いが狂信という域にまで達し、己の身に降りかかってくるとなると、とても恐ろしく感じます。
けれど、それでも愛した人や家族にまた会えるなら、再度生まれなおす事が出来るなら。誰しもそんな神を望んでしまう、そんな閉鎖的な体制の維持を望んでしまう可能性があるのかもしれません。

また、主人公がきちんと良い夫であり、父であったところも好感が持てました。普通の人なので、何か荒事とかがあると全く対処できないというかむしろ足を引っ張っていたりはするんですが、そこが逆に巻き込まれた一般人ぽくて良く、どんなにつらい思いをしても妻と子供を守りたい! という気持ちだけは一貫していて、応援したくなります。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ホラー
感想投稿日 : 2022年7月19日
読了日 : 2022年7月19日
本棚登録日 : 2022年7月19日

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