美しい距離

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レビュー : 117
hanaさん 山崎ナオコーラ   読み終わった 

夫婦の美しい距離。

出会った頃は丁寧語で話し、そのうちタメ口になる事。
妻の顔に化粧水や乳液、クリームをつける事。
病院の付き添いで誰か一人泊まってもいいと言われた日に、夫の自分ではなく母親にと言われる事。
妻にとって近しい存在は親なのか自分なのかと考える事。
残された時間が少ないとわかっていても、希望を失っている訳でも妻の未来が消えてしまう瞬間を見届けたくてそれを目指して看病している訳でもなく、ぎりぎりまで出来るだけ長く生きていて欲しいと願いながら毎日を暮らしたいと思う事。
病院でキスぐらいすれば良かった、死ぬ前でも、死んだ後でもこっそり…と後悔する事。
妻が亡くなると妻との間が急速に離れ、遠い存在になって行く事。
亡くなって数日すると妻に話しかける言葉が尊敬語や謙譲語になる事。
毎日のように見ていた妻の夢の間隔がだんだんと長くなり、夢の中の妻は若く元気で頬がふっくらとしている事。
一年が過ぎるとお墓の前で話しかける言葉が出会った頃のような敬語になり、関係が遠くなるのも乙なものだと感じる事。
淡いのも濃いのも近いのも遠いのも、全ての関係が光り、遠くても関係さえあればいいと思える事……。

初々しい距離、微笑ましい距離、悩ましい距離、もどかしい距離、やりきれない距離、後悔する距離、少しずつ遠ざかって行く距離…。どれも愛おしくて美しい距離。
淡々としていて剥き出しなところがない。お互いの心の中にはあるのだろうけれど、感情をあらわにしてしまったら止められなくなりそうだ。変わらない想い、変わって行く想いが切ないけれど、美しい距離や関係は変わらない。

レビュー投稿日
2019年12月31日
読了日
2019年12月29日
本棚登録日
2019年12月29日
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