戦争とおはぎとグリンピース 婦人の新聞投稿欄「紅皿」集 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2019年6月14日発売)
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本棚登録 : 72
感想 : 8
5

 毎年この時期は、戦争に関する本を読むことにしている。
読もうと思って買ったまま積読になっている本もあるけれど、この本は以前から読みたくて、文庫になっているのを見かけた時は嬉しくて、即購入した。
そして、昨日という日をあえて選んで一気に読んだ。

 敗戦から9年後の1954(昭和29)年、西日本新聞に開設された女性投稿欄「紅皿」。女性読者による日々の経験や主張、真実の声が寄せられ掲載されたものの中から、戦争に関連した当時の時代の空気感が伝わってくるような42編がこの本に収録されている。

 市井の女性たちの目を通して、暮らしの中に見える戦争の記憶と爪痕。再軍備への不安、たった十数年でもう風化していく惨劇の記憶への戸惑いと平和への願い。
何編かは、涙を流さずに読めなかった。
命がこんなに軽く扱われてしまう戦争は、どんな大義名分があっても起こしてはいけない。
市井の人々の言葉だから、何とも言えずしみる。
不自由で食べていくのも大変だった時代を逞しく生きる女性たちの綴る暮らしの様子。本当に頭が下がる思い。
「おはぎ」を読んでいる時には、涙がこみあげてきた。

 また、興味深いことも書いてあった。
ある悲劇的な内容の投稿の事実を追ったところ、真実ではない内容が加味されていたこと。
記憶の誤りなのか、内容が過激な方が掲載されやすいと思っての創作なのか、聞いた話を足したのか、他にもっと違う意図があったのか、今となっては確かめることができないけれど、考えさせられる。

 ひとつひとつが短くすぐに読めてしまうけれど、私は途中から音読した。
声に出して読むと、更に良いです。ぐっとくるものが大きくなる。

 オススメします。とても良い本だと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: Books
感想投稿日 : 2019年8月7日
読了日 : 2019年8月6日
本棚登録日 : 2019年8月7日

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