キッチン (角川文庫)

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レビュー : 1589
著者 :
水菜ミルクティさん  未設定  読み終わった 

あとがきを読んでそうだったのかと思った。
いわゆる感受性が強い人間というのは、沢山はいないんだそうだ。私は大体の人間の感受性はとっても強くて、だから『北の国から』を観て泣くし、お笑いを観て笑うし、不条理な交通事故をニュースで知って悲しむし、見知らぬ人から失礼なことをされたら怒るものなんだと思っていた。しかし、それはどうやら思い違いだったらしいのだ。

ここ半年ほど、私は宇宙人のような人物と連絡を致し方なくキープ・オン・ザ・タッチ(継続)しなければならなかった。しかも現在進行形である。断っておくが、相手が宇宙人というわけではなく、立派な地球人である。私は別にNASAの人間ではない。ただ、向こうとのコミュニケートがひっじょうに取れない。キャント・コミュニケートである。不可能に近い。どうしてこちらが「〇〇してよろしいでしょうか?」に対する応答が「どうしてそういうこと聞くんですか?」なのだ。気に障って難癖付けるのを百歩譲って受け流すとしても、せめて質問に対する返事が必要だろう。とにかく新人類、もしくは宇宙人に遭遇してしまったとしか思えないのだ。
おかげで精神的にずっと滅入っている。周囲の解読班(宇宙人的相手をなんとしても攻略せんがために家族、友人、先輩などなどを巻き込んだ連絡内容解読&返信内容作成班を結成したのであった)は「こんな人、気にするなよ」と気安く言ってくれるが、そうもいかない。あと半年もあるのだ……。
それを「オマエは気にし過ぎ」と指摘してきた人がいた。そうか、気にし過ぎなのか。今までずっと他人の進路や人間関係、はたまた見知らぬ人の服の裾がほつれているところまで気にしていた私は、いささか気にし過ぎていたらしい。
感受性とこれを同様のものとみなすのは、なんだか語弊があって不味いかもしれないのだけれど、似たようなもんかなとも思う。変な偏りがある人に響くよう、『キッチン』は編まれたのだと思いたい。

台所、母親の象徴。そこに母はいない。母性はあれど、母はいない。家族を失うということ。それも二度。なかなか嫌なものだろう。一回で御免だ。でも、実際はどうなのか知らない。知りたくないけどね。
だが、考えてみれば人間というのは基本的にたいてい一、二回家族を持つことになるようだ。一回目は生まれた家。二回目は自分が作った家。それ以上となると、まあ複雑でややこしい面倒な事情でもあるのだろう。そして、それだけの回数自分の何かを失う日があるのだ。それが一体何なのかは分からない。一部と言ったって何一つ欠けたところは無いし、心も元気が無いだけで失ったわけではない。空間が出来てしまっただけ。
私もいつか大切な家族を失った時に、キッチンと仲良く夜を明かすかもしれない。ソファで寝るかもしれない。すぐに元気になることは無理だけど、流れていく自分の月日をうんざりするぐらい思い知って、どうにかこうにか動いていけたらいいなと思う。

レビュー投稿日
2013年10月17日
読了日
2013年10月17日
本棚登録日
2013年10月17日
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