輝く日の宮 (文芸第一ピース)

著者 :
  • 講談社 (2003年6月10日発売)
3.55
  • (13)
  • (13)
  • (31)
  • (5)
  • (0)
本棚登録 : 123
感想 : 29
5

世の中にこんな本があるのか、と思わず唸ってしまったとても読み応えのある本でした。読書の楽しさを認識しながら読める本なんて初めて!
まだ4月ですが今年1番の良書だと言い切ってしまいたくなるほどのインパクトです。
源氏本を探していて図書館で借りた本ですが、手元に保管したくなりました。買わなきゃ

何がすごいって、いろいろあるんですけどまず文体。旧仮名遣いで書かれています。
ちょっと引用すると・・・
『「さうさう、さつきお使ひが・・・」と差出せば広やかな玄関の薄闇(くらがり)に角封筒の白ほのか。』
美しいでしょう。日本語の美しさが滲み出ていてね、読み終わった後は自分の所作が少しお上品になってしまう(笑)。言いすぎかな?
もちろんはじめは読みづらくて戸惑ったけどそれは0章だけ。すぐに慣れます。この文体で違和感なく読ませられるってすごい。
それから、源氏以外にもたくさんの知識が詰まっているので自らも知識欲が沸いてくる!
例えば芭蕉。なぜ彼は東北へ向かったか、とかね。
義経五百年忌説で話が進みますがありえるなあーと思ったり。私なんて今まで芭蕉忍者説くらいしか聞いたことなかったから(笑)単純に感心し信じてしまいそうになりました。ただ、芭蕉についての前知識があまりにも乏しいので、理解出来ずじまいなところも多かったですけど・・・いつか芭蕉も読みたい、と思わせてもらいました。。

その他シンポジウムのシーンも白熱し、国文学会ってこんな感じ?研究するってこういうこと!と覗き見できた感じでワクワクしました。自分も勉強、したくなります。

で、肝心の源氏の話。
紫式部は、33帖の藤裏葉まではa系を先に書き、次にb系を書いてはめ込んだいう説があるそうです。
(a系は紫の上にかかわる筋、b系は玉鬘にかかわる筋で、紫の上系、玉鬘系とも言われている。)
具体的には

a系
1桐壺
5若紫
7紅葉賀~14澪標
17絵合~21少女
32梅枝
33藤裏葉

b系
2帚木~4夕顔
6末摘花
15蓬生
16関屋
22玉鬘~31真木柱

よって、a系だけで読んでも筋が通るそうです。
そんな話も初めて知ったので感動しました。今度a系だけで読んでみたい。。
そうやって研究していくと
・朝顔の君が突然出てくる。
・六条御息所との出会いのきっかけが不明。
・藤壺と最初に関係した場面がない。
というところが不自然だそうで、それが描かれていたのが幻の一帖「輝く日の宮」なんですって。a系の中にそれがあったはず。なんて言い切るわけにはいきませんがそういう説があるそうです。
この物語の後半で、紫式部と藤原道長の関係性を追いながら、主人公の国文学者安佐子が謎を解き明かしていきます。

いろんな学説に触れられる上に、そこに至る思考方法や根拠が丁寧に描かれ、また、主人公安佐子と長良の恋の行方を、紫式部と道長を髣髴とさせるような余韻を持って描かれてる仕掛けがとても凝っているし上品で美しいです。
源氏の謎はミステリアスだし、道長も長良も色っぽくてかっこいいし、本当にいろいろな面で楽しめました。すばらしい!☆5個じゃ足りない~

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 古典
感想投稿日 : 2012年9月14日
読了日 : 2012年4月10日
本棚登録日 : 2012年9月14日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする