生まれる森 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2007年5月15日発売)
3.37
  • (42)
  • (124)
  • (255)
  • (29)
  • (5)
本棚登録 : 1251
感想 : 124
4

失恋した女の子がゆっくりと息を吹き返す話。
視点もテンポも息遣いも、すべてが優しさに満ちている作品だった。
しとしと降る長雨のような。
ちょっと憂鬱なんだけど、とても落ち着く作品。
浮足だつところがない。なんとか浮上しようと無理しない感じが良かった。

印象的だったのは月の描写。
ちょいちょい月が出てくる。
誰かの肩越しに、窓に。
それもまた、再生に向かう優しい時を感じるのかもしれない。

正直言って、主人公がとらわれているサイトウさんは読めば読むほどどこがいいのかわからないような、むしろ気味の悪いやつだったが、そうすることで主人公の残されてしまった抽象的な想いに焦点があてられて良かったのかも。
タイトル「生まれる森」すごく作品にあってると思う。
しっとり感と力強さ。森になる最初の小さな芽吹きを見た気がした。
キクちゃん、好きだわ。
雪生さん、いい人だけどきっと苦手だ(笑)
店長、うざキャラだけどやたらリアルで良いバランスだった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2016年7月5日
読了日 : 2016年7月5日
本棚登録日 : 2016年7月5日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする