原著は1947年。当時のアイルランドは独立を達成したばかりで、イギリスの植民地支配を批判するナショナリスティックな歴史書が流行していた。本書はそれらへのアンチテーゼとして書かれたより広い観点からの文明史である。作家の書く歴史というのは骨太だ。有史前から「修道院制度」が発達する西暦6世紀までを「根」、イギリスの支配が始まる16世紀までを「幹」、アイルランドが独立するまでを「枝」と区分していて、しかも「枝」の時期は特徴的な6つの社会階層(新農民、英国系アイルランド人、反逆者、司祭、作家、政治家)の心性とその背景を描くことによって、アイルランドの精神と文化を浮き彫りにしている。戦後アイルランドを理解する鍵はこの6つの階層の動態にあるということなんだろう。アイルランドってキルトと音楽ぐらいしか知らんかったので、実に面白かった。なんか朝鮮半島の文化史と似ているような気がするので、対比して読むとよいかも。あと訳者の紹介がほしかったかな。
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カテゴリ:
アイルランド
- 感想投稿日 : 2006年8月16日
- 本棚登録日 : 2006年8月16日
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