透明人間の告白 下 (新潮文庫 セ 2-2)

  • 新潮社 (1992年5月1日発売)
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本棚登録 : 291
感想 : 17
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透明人間が逃亡中!何だかグロテスクな話だし、奇妙に思われる。いかにも形而上的存在のはずなのに、いささか俗っぽすぎるではないか…。だがそれは、ニューヨークという人口超過密地帯だから起こりうる、人間と人間の数段ズレたすれ違いなのだ。

透明人間は「普通の」人間であることを拒否された人間だ。普通の人間には、いちいち「普通の」という形容詞がつかない。裏返せば、形容詞がつく人間は、普通ではない。それに、いちいち形容詞をつけるくらいだから、よほど風変わりな特徴を持っているということである。透明人間は、「透明の」という部分ばかりが強調されている。それは、もはや(普通の)人間とは同じ扱いをしてもらえず、「透明」ばかりが興味の的となる。

透明人間当人であるニック・ハロウェイさんは、これをどう捉えるだろうか。そりゃ嫌である。不運な事故のせいで、急に人扱いされなくなっただなんて。秘密情報機関だか何だかみたいな物騒なところに捕まったら、それこそモルモットと同列ではないか!だったら、逃げる、隠れる。透明人間は隠れるのが得意な種族なんだよ。

だが、ニックも人の子である。誰かと関われないと寂しい。なにか憂さ晴らしがしたい。例えば――恋。なんやかんやで、アリスという女性とであう。やっぱり孤独は耐えられない。

そんな「人間」関係は、うまく続くのだろうか…?ジェンキンズ一行もなかなか諦めない。ニックは男になれるのだろうか?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年5月18日
読了日 : 2012年5月16日
本棚登録日 : 2012年5月12日

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