食の終焉

  • ダイヤモンド社 (2012年3月9日発売)
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食システムの危機をいかにして乗り越えるべきか?

筆者は、食そのものは本質的に経済活動でない、としている。しかし今や、食が資本主義経済に取り込まれてしまい、さらにはグローバル化してしまっている。資本主義的な市場システムのもとで作動する食システム(食の生産から消費までの全体像)は、確かに効率的になり、より多くの食料を生産・消費することに成功してきた。しかし、それは資源の過剰消費や、外部コストの発散によってなされたものだ(これは単純な需要―供給モデルでは分からない)。従って、現在の食システムは全く持続可能的ではない。何かしらの「想定外」(大型ハリケーン、鳥インフルエンザ、石油産出諸国の政治動乱…)が起これば、すぐにでも大打撃を受ける。仮にそれらの擾乱がなくとも、いずれ資源が底をつき、食システムは成立しなくなる。

では、悪いのは誰なのか?
本書では、生産者、加工業者、流通(小売)業界、国家のすべてを調査の対象としている。ここから分かるのは、どこもかしこも問題だらけだということだ。大農場も悪いし、ネスレも、マクドナルドも、ウォルマートも、政治家もとんでもない大悪である。だったら改革しろ!でなきゃ潰せ!と息巻きたくもなる。ところが、それでは解決にならない。
そもそも、これらが激しい競争を推し進めているのはなぜだろうか?それは、消費者のせいである。そして究極的には、われわれ一人一人の問題なのである。競争を勝ち進めるために、分業と大規模化を進めざるを得ない。それはまさに、経済の法則に飲み込まれ、それに従っているだけの存在である。消費者が今と同じ効用の最大化(腹いっぱい旨いもの、特に肉を食いたい!)を期待している限り、企業は経済法則から逃れられないのである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2012年12月5日
読了日 : 2012年12月5日
本棚登録日 : 2012年11月29日

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