2024年本屋大賞作品「成瀬は天下を取りにいく」
の続編です。

ますます唯我独尊の成瀬あかりが周囲のひとたち
に与える影響を描きます。

成瀬の生き方や振る舞いは、「あれ、私は何を目
標に生きているのだっけ?」と本質を突いてきま
す。

そして成瀬に魅入られた人は、「私は成瀬に必要
とされている人間なのだろうか」と悩みます。

成瀬が遠くに行ってしまうことによって「今まで
の日常」がいかに大切だったかに気づかされます。

そうなのです。成瀬あかりの生き様は周囲の人達
の日常に大いなる刺激を与えます。気づきを与え
ます。

成瀬を受け入れた人は、もはや成瀬から目が離せ
なくなります。

これはまだまだ続きますね。

私も今後の成瀬が楽しみです。

2024年5月29日

読書状況 読み終わった [2024年5月24日]
カテゴリ 小説

1955年、あの阪神タイガースの監督に就任した
一人の人物がいました。

岸一郎という当時としては老人の域に入る年齢
は60歳過ぎです。

年齢もさることながら驚くのはその経歴です。
なんとプロ野球の経験が無い、アマチュア出身
です。ホントか?

今では、いや当時でも考えられない人事です。

何でも当時のオーナーに「チームの改善案」の
手紙を送ったのが目に留まり、オーナーの「鶴
の一声」で決まったとか。そんなアホな。

シーズンが始まると案の定、選手との軋轢が生
じ、ベテラン選手などはマスコミを使って追い
落とそうとします。

そうです。たびたび世の中を賑わす阪神の「お
家騒動」は、これがルーツと言っていいのです。

フロントの強引さ、選手のマスコミを使うした
たかさ、それを評論家となって煽るファン達。

現在の岡田阪神は勝っているから周りはおとな
しいですが、負けが込むと始まるでしょう。
お得意の「お家騒動」が。

阪神ファンでなくてもプロ野球を愛する人なら
ば、きっと「ああそうだよね。阪神って」と
納得できる一冊です。

2024年6月7日

読書状況 読み終わった [2024年5月22日]

あらゆる業界を題材に謎解き小説に仕上げる
真保氏の最新作は、音楽業界です。

レコード会社の一社員が発掘した新人バンド
をサポートし、その才能に見合うだけの予算
をかけて売り込みを仕掛けます。

その過程を小説にするために調べるだけでも
大変かと思いますが、その中にミステリーの
要素も組み入れるのです。

その新人バンドは実名を明かさず覆面バンド
として活動をしたいと申し出てきます。その
理由には大きな秘密がありました。

物語はその秘密を中心に展開していきますが、
されに二重三重の仕掛けが終盤に用意されて
います。

すごいぞ真保裕一。

まだ読んでいない著作が多くあるので、それ
らも全て読んでみたいと思わせる一冊です。

2024年6月5日

読書状況 読み終わった [2024年5月19日]
カテゴリ 小説

とんねるず。この人達もバブルという時代に愛され
それを全力で駆け抜けたコンビです。

しかも猛烈なパワーを持って、です。

お笑い芸人が、その番組名に付けられたいわゆる
「冠番組」はこの人達が最初だろう。

漫才師でもなくコメディアンでもなく、でも歌手で
あり、タレントでもある真のエンターテイナーです。

そんなコンビの一人である木梨憲武氏が自身の人生
を振り返ります。

予想はしていましたが、ここまで時代に愛されてい
たとは驚きです。

何も考えずに突っ走ったわけではないですが、特に
計算したり目標を定めて今の地位を気づいたわけで
はないようです。

あえて言うなら「なんか面白いことないかな」と目
配せした結果のようです。

でもイヤミじゃないです。

ノリさん。あんたはやっぱりいいヤツだよ。

2024年6月2日

読書状況 読み終わった [2024年5月13日]
カテゴリ なんでも

よく耳にする話題ですが、日本の最高学府である
東京大学も、世界のランクでは30〜40番目にな
ってしまうらしいです。

元々世界ランクなんて意識せずに過ごしてきた人
からすれば、「それがどうしたの?」という気持
ちであると思います。

しかしここで論じられるのは、国内トップである
東大へ送り込もうとする教育制度です。

明治時代からほぼ変わっていない日本の教育制度
は典型的岩盤規制で固められいて、関係者は既得
権益に守られているのが実情です。

コロナ禍で少しだけ議論になった「9月入学制度」
でさえも今や誰も話題にすらしていないです。

大量生産、大量消費時代には大いに効果を発揮し
ていた現行の教育制度は曲がり角に来ていると言
っていいでしょう。

教育にも多様性が求められる時代なのだと痛感さ
せられる一冊です。

2024年4月28日

読書状況 読み終わった [2024年4月26日]
カテゴリ 新書

ご存じ、加賀恭一郎シリーズです。ちょっとだけ
ネタバレ含んでいます。

色々な意味で読者を裏切る作品です。

舞台は別荘で起きた連続殺人事件という触れ込み
です。

となると加賀刑事が探偵役で、本格ミステリーを
地で行くフーダニットモノかと思わせておいて、
そうではない。

事件関係者が一堂に集まって真相が徐々に明らか
になっていく部分はそうですが、その関係者は全
員被害者の身内なのです。しかも論理的に犯人で
はありえない展開なのです。

当然、意外な人物が犯人ではあるのですが、それ
さえも伏線なのが凄い。

どんでん返しなどという言葉では表現できないく
らいの逆転です。

作品のたびに、その逆転度合いが強くなっていく
気がします。

凄い作家です。

2024年4月14日

読書状況 読み終わった [2024年4月12日]
カテゴリ 小説

この分野にもマニアがいるものなのですね。嫌いじゃないけど・・・。

「矢印の方向に進むことができますよ」を表示している「指定方向外進行禁止」の標識を集めた写真集です。

道路の形状や、地域によって表示方法が異なるらしいです。

それを日本中から探すって・・・

偶然見つけたら楽しいかもしれないですが、それを目的に旅は出来ないかと思います。

でも、これからは車を運転していない時でも標識が気になってしまうかも、です。そんな沼に誘う一冊です。

2024年5月6日

読書状況 読み終わった [2024年4月12日]
カテゴリ なんでも

「ひと」「まち」「いえ」などの著作で知られる
小野寺史宜氏の最新作です。

登場人物が皆優しく、他人をうらやまず、自分を
卑下せず、前向きに生きていく心安らぐ物語です。

今回はあるアマチュアバンドのメンバーの心の移
ろいを丁寧に描いています。

バンドが解散して離れ離れになっても、何年経っ
ても電話一本でお互いにすぐに理解し合える関係
は素敵です。

読後にほっこりし、他人に優しくなれる一冊です。

2024年5月19日

読書状況 読み終わった [2024年4月10日]
カテゴリ 小説

今回も痛快な作品です。

お馴染みの「殺し屋」シリーズです。あの天道虫が
「簡単な仕事」の依頼を受け、あるホテルへ行くの
ですが、例によって騒動に巻き込まれてしまいます。

いつものように絶体絶命のピンチを驚くべき方法で
脱する天道虫は不死身のキャラです。

マリアビートルも映画化されたように、これも映像
化されてもいい作品です。

できれば日本人の演者で制作されることを望む一冊
です。

2024年3月20日

読書状況 読み終わった [2024年3月17日]
カテゴリ 小説

言わずと知れた手塚治虫氏の名作漫画「ブラック
ジャック」です。

実は週刊誌連載時と単行本掲載では、かなり構成
やコマ割りが異なっていて、マニアの間では話題
になっていたそうです。

特にペン入れ段階、つまり下書き的な状態のコピ
ーがマニアに出回ったり、セリフの書き換えなど
は常にマニア心をくすぐっていたとか。

それらを一冊にまとめたのが本書です。

なるほど、修正前と後を比較してみるとよくわか
ります。変更によって作品が格段によくなってい
るのです。

まさに手塚氏は総合監修者としても比類なき存在
であったことが分かる一冊です。

2024年3月28日

読書状況 読み終わった [2024年3月11日]
カテゴリ なんでも

VRゲームを模倣した連続殺人事件が発生します。
真似されたゲームの内容は、そこはゲームだけあ
って、現実とはかけ離れた殺され方をされてます。

身元が判明できないほど焼かれた焼死体や、見え
ない槍のような凶器で貫かれた遺体などです。

ゲームの中では究極の武器である「魔法」が使わ
れたのではないかという議論が起きます。

しかし現実でも同様の事件が起きてしまうのです。

現実では「魔法」はあり得ないです。しかしゲー
ムに見立てているのであれば、ゲームの中にも解
決の糸口があるのではないか、と睨んだ警察はゲ
ームの中に活路を見出そうとするのです。

ミステリーをエンタメの極致にまで昇華させて一
冊です。

2024年3月10日

読書状況 読み終わった [2024年2月27日]
カテゴリ 小説

コロナ禍において地方の学校同士がリモートで
繋がり星を観測します。

参加する生徒はさまざまな事情を抱えています。

部活の地区大会の中止、緊急事態宣言による自
宅待機、そしてソーシャルディスタンスなど、
多くのストレスにさらされながら学校生活を送
らなければならない状態です。

そんな環境下で得ることができた一つの目標。

登場する学生は中学生であったり高校生であっ
たりと様々ですが、皆素直で一つの目標に向か
って進む姿は輝いています。

自分はこんなに一生懸命に走る学生時代を過ご
せていたのだろうか、と自問してしまいます。

夏の太陽と、夜空の星と、生徒等の言動に眩し
さを感じる一冊です。

2024年2月12日

読書状況 読み終わった [2024年2月12日]
カテゴリ 小説

2023年「このミス」1位の「爆弾」に続く作品
です。650ページに及ぶ超大作です。

カリスマ的才能を持った若者をより輝かせるため
の野心を持った取り巻き達の狂気と、血の繋がり
は無いものの、その若者と家族の関係である人間
等の醜悪さが織りなす物語に引き込まれます。

カリスマは生まれるのか。それとも創り出される
のか。

それは天と地ほどの違いではあるが、根っこは同
じなのでは?と自問自答させられる一冊です。

2024年2月7日

読書状況 読み終わった [2024年2月2日]
カテゴリ 小説

これは一級のノンフィクションです。

クリントイーストウッドの映画で「玉砕の島」
として広く知られる硫黄島(ちなみにイオウジ
マではなく、イオウトウです)

約2万人の兵士が犠牲になったと言われていま
すが、実はそれらの遺骨は現在でも半分が見つ
かっていません。

そもそも民間人の上陸は禁じられていて、遺骨
の探索も多くて年に4回程度です。非常に少な
いのです。

なぜか。

戦後、硫黄島が辿った歴史を掘り起こすことで
その理由が見えてきます。

遺骨の探索に関わる人は主に、硫黄島に散った
兵士等の遺児です。

しかし当然彼らも高齢です。残された遺族がど
んな思いで遺骨を探すのかが、痛切に伝わって
きます。

本文中に出てくる「戦争は終わっても戦禍は残
る」という言葉を理解できる一冊です。

2024年2月14日

読書状況 読み終わった [2024年1月3日]

2024年本屋大賞です。

何事もマイペースで、時に飄々と、時に淡々と
物事をこなし、そして勉強もできる成瀬。

こういう子は周りから浮きます。

しかし本人は全く意に介さず孤高を貫きます。

いいですね。

中学、高校時代には同調圧力に押し潰されてし
まう人が大半の中で、一人で嵐の中で立ち続け
るその強さ。

「こういう生き方もあるんだよ」と教えてくれ
る小説です。

200歳まで生きる、と宣言する主人公の成瀬あ
かり、M-1に出ると言う成瀬あかり、どれもい
いです。

既に続編が出ています。

どこまで天下に迫れるか。成瀬あかり。

2024年4月10日

読書状況 読み終わった [2023年12月24日]
カテゴリ 小説

40年も前に書かれた中編作品を書き直したのが
これだという。

その当時、世に出すのは憚られ、内容を磨き直し
たのが「世界の終わりとハードボイルドワンダー
ランド」ということだそうです。

なるほど、内容は似ています。

村上春樹独特のパラレルワールドものですが、厳
密にはパラレル(並行)ではありません。

それぞれの世界での物語が独立しています。しか
し、ほんの少しだけ別の世界が垣間見えることが
あります。

これを隔てるものが「不確かな壁」ということな
のでしょうか。

作者にとっては珍しい「あとがき」に記されてた
内容によると、コロナ禍のほぼ3年間に書かれた
作品らしいです。

そんな「外から隔離された壁の中」をイメージさ
せる一冊です。

2023年12月20日

読書状況 読み終わった [2023年12月20日]
カテゴリ 小説

これはいい作品です。いわゆる「医療モノ」の
エッセンスが凝縮されています。

ブラックジャックのヒューマニズム、ドクター
X(エックス)の爽快感、白い巨塔の腹黒感、
そしてそこに神様のカルテの清涼感が加えられ
ている、という感じです。

大学病院では一目置かれる存在でありながら、
家庭の事情で町の病院に勤務する主人公のお話
です。

その主人公を巡るドラマは、舞台である古都、
京都と相まって、人が忘れてはいけない大事な
事を気づかせてくれます。

題名にもある哲学者、スピノザも読んでみたく
なる一冊です。

2023年12月3日

読書状況 読み終わった [2023年12月2日]
カテゴリ 小説

「二度読み不可避」「装丁すら伏線」などの惹句
で、多くのメディアに紹介されている話題作です。

なるほど、多くの伏線が終盤に回収されます。

そして何より世界が反転するという、これまでミ
ステリー小説の引き文句でよく使われる言葉が、
これほど当てはまる作品はないな、と感じました。

ミステリーの大御所作家の遺作とも言える作品が
作中作として展開されていき、「事故」と思われ
ていた15年近く前の出来事の真実が明らかになっ
てきます。

しかしその作中作には不自然な点があると主張す
る編集者の指摘が明らかになるにつれて、物語は
文字通り「反転」します。

確かに「あの部分はそうだったっけ?」と見返し
てしまうこと必至の一冊です。

2023年12月6日

読書状況 読み終わった [2023年11月30日]
カテゴリ 小説

ご存じの直木賞受賞作品です。

今村翔吾氏の作品は時代小説ではあるが、史実
に則りながらも巧みに現代の視点が物語の要諦
を成しています。

どんな攻撃にも耐えることができる石垣と、い
かなる防御も破る火器との戦い。

まるでどこかの国のミサイルと、それを防ぐた
めのシステムの構築との関係に似たものを感じ
るのは、多くの読者も同じと思います。

矛盾の行き着く先は平和か破滅か。

司馬史観と言われた司馬遼太郎氏の歴史小説と
は、全く異なる歴史観を示してくれる一冊です。

2023年11月22日

読書状況 読み終わった [2023年11月22日]
カテゴリ 小説

現代の格差社会の実情をテーマにミステリー
小説に仕立て上げた、著者の真骨頂の作品で
す。

Fラン大学の学費にも四苦八苦する女子大生が
あるきっかけで上流社会へとのし上がっていき
ます。

黒革の手帖のように、他人の秘密を握って立ち
回るのではなく、不思議なくらい彼女を擁護し
てくれる人が現れるのです。

そして彼女の上昇の過程は、彼女自身のSNSで
発信され、拡散されていく。

SNSの内容は、成り上がった後の彼女姿だけな
ので、それに憧れるフォローワーは増える一方
です。

だが反対にそんな生活を妬む人も出てきます。

実際に同じような有名ブロガーが被害に遭う殺
人事件が多発していたのです。

有名ブロガーはたまたま通り魔に襲われたのか。
それとも貧困層による復習なのか。

ラストはちょっと無理筋と感じましたが、現代
社会を鋭く抉った一冊であることは間違いない
です。

2024年1月8日

読書状況 読み終わった [2023年11月16日]
カテゴリ 小説

令和5年の江戸川乱歩賞受賞作品です。

ミステリー小説というより、大正期を舞台にした
時代小説を読んでいるようでした。

そう、舞台は大正時代です。場所は山陰の鳥取。

しかも登場人物は実在したようでして、そこは
歴史小説でもあるのかな。

与謝野晶子や平塚らいてうを筆頭に「表現する」
「発信する」女性を目指す主人公が事件に巻き
込まれ、それを探偵の如く解決します。

と書いてしまうと単純に思えますが、大正時代
という雰囲気が文面から非常によく表れていて、
まさしく江戸川乱歩氏の時代を彷彿とさせる一
冊です。

2023年10月22日

読書状況 読み終わった [2023年10月18日]
カテゴリ なんでも

ミステリーの短編集です。

今時のマッチングアプリやリモート飲み会
などがツールであり、それらが実にうまく
ストーリー展開に使われています。

いずれの作品も最後の最後に「そういうこ
とだったのか」と伏線が回収される展開に
唸ってしまいます。

文句なく「これ面白いね」と誰もが納得す
る一冊です。

2023年8月20日

読書状況 読み終わった [2023年8月20日]
カテゴリ 小説

「ラプラスの魔女」から続く特殊能力を持った
女性を巡る物語です。

今回はなんでもAIの力によって処理できるよう
になった近未来が舞台であり、逆にAIと特殊能
力との対比によって「もっと人間の可能性を信
じるべきだ」というメッセージも込められてい
ます。

特殊能力を持つ羽原円華と知り合った中学生2
人は、殺された父親の犯人を捜すために警察と
は異なるルートでアプローチを仕掛けます。

これが少年の真夏の大冒険よろしく、楽しくも
あり、スリルに富んでいます。

意外な犯人に辿り着くストーリー展開は、一気
読み必至の一冊です。

2023年8月2日

読書状況 読み終わった [2023年8月2日]
カテゴリ 小説

あの「ジェノサイド」でミステリー小説という
枠を見事に打ち破ってみせた高野氏の新作は、
何と「幽霊」です。

今度は逆にミステリー小説の中で、本当のミス
テリーを題材にしています。

ある踏切の写真に写る女性のぼんやりとした影。
果たしてそれは本当に幽霊なのか。

いわゆる「心霊写真特集」のような人の興味を
引くだけの記事を書くために取材していた主人
公である雑誌記者が、徐々に真相に近づいてい
くが、それがとんでもない方向へとつながって
いきます。

「きっとこういう事ってあるのかもな」とその
リアリティに納得させられる一冊です。

2023年7月9日

読書状況 読み終わった [2023年7月9日]
カテゴリ 小説
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