息子と狩猟に

著者 :
  • 新潮社 (2017年6月30日発売)
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本棚登録 : 147
感想 : 18
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サバイバル登山家の服部文祥の初の小説です。
そもそも本読んでいても思考ルートが常人と違っていて、自分で決めたルールの中で冒険するので世間一般の価値観なんて知るか。というタイプです。なので記録よりもいかに自分ルールの中で生き抜けるかを重視しているので、ある意味「白線の上から外れたらガケから落ちて死ぬ!」と言いながら道路で遊んでいる小学生に近いような気がしています。

そんなはぐれもの冒険家が独特の倫理観を開帳する2編です。あらすじとか気にしないで読んでいたので、題名からの想像で、父から息子への知識技術継承の男臭いハートフルなものを期待していました。ところが読んでびっくり。2編ともとんでもなく違和感のある話で胸にざらざらした感覚が残りました。これは物語の出来とかいい悪いではなくまさに命に対する思想の問題だろうと思いました。
命に差は無い、という意味には2方向の意味があると初めて考えました。
一つは、「命は同じだけ価値が有って皆大事」という考え方。これは一般的だし分かりやすい。ただその中にきれいごとや欺瞞の臭いがプンプンするのも確か。
もう一つは「どの命だって価値は同じだから人間でも動物でも殺すという行為に変わりは無い」というまさにディストピア的な思考。語感の拒否感は凄いけれど命を同価として評価するという事では、何故か同じことを言っています。
襲いかかってきたものが大型肉食獣と人間だった時に、人間を殺すと罰せられるのは「自然の法」ではなく「人間の法」で、「自然の法」の中で生きていく時に何が許されて何が許されないのかはまた別である。服部文祥は「自然の法」の中に置いた時の倫理で行動するのだという決意表明にも感じられる本でした。
個人的には違和感は拭い去れませんが・・・。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年7月9日
読了日 : 2019年7月9日
本棚登録日 : 2019年7月9日

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