たゆたえども沈まず

著者 :
  • 幻冬舎 (2017年10月25日発売)
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本棚登録 : 5770
感想 : 628
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内容(「BOOK」データベースより)
19世紀末、パリ。浮世絵を引っさげて世界に挑んだ画商の林忠正と助手の重吉。日本に憧れ、自分だけの表現を追い求めるゴッホと、孤高の画家たる兄を支えたテオ。四人の魂が共鳴したとき、あの傑作が生まれ落ちた―。原田マハが、ゴッホとともに闘い抜いた新境地、アート小説の最高峰。ここに誕生!

大胆な人だなと思っていましたが、夢枕獏さんに近い位に大胆です。
何しろゴッホの人生と、当時現地で日本美術を輸入していた人物とを結び付けて、現実と溶け込んでどこが区分けか分からない小説を書いてしまうんですから。
そもそも絵画に素養が無い僕のような人間を、毎回楽しめる本を書いてしまう原田さんの筆力は尊敬に値します。都度絵を確認しがら読むのですが、本物を見てみたいと思わせる熱があります。
暗幕のゲルニカや楽園のカンバスは、現代からの視点と当時の視点の2つが交差して、現代の物語でカタルシスを得ていましたが、今回は兄フィンセント(ゴッホ)と弟テオの死によって終わる事があらかじめ分かっていたのでなんだかとってもメランコリックです。
ゴッホと日本の関わりをここまで見せられると突然親近感が沸いてきます。これ読んでいると現実と虚構の狭間が分からなくなって脳内で新たな真実が産まれそうで怖いです。この大胆な書きっぷり好きです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年7月31日
読了日 : 2018年7月26日
本棚登録日 : 2018年7月26日

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