中卒で家を飛びだして以来、流転の日々を送る北町貫多。一時の交情、関係を築きつつも必ず最後はメチャクチャに破綻してしまう彼の孤独な姿はそのまま自分自身の裡にあるのではないかと思い、彼の作品を読んでます。
ここには短編集がいくつか納められていて、そのうち、『悪夢―或いは「閉鎖されたレストランの話」』以外はすべて自分自身の体験から生まれた私小説です。『人もいない春』では印刷会社の職工に些細なことで絡んで悪態をつき、雇用の契約が延長されずに解雇され、タクシーの運転手にまで当り散らし、『二十三夜』では男女のことでトラブルを起こし、大喧嘩の末に店を追い出されたり、『乞食の糧途』では同棲する秋恵との危うい生活が描かれます。
その秋恵を『赤い脳漿』で彼女のトラウマとなっている交通事故で目の当たりにした人の脳漿にそっくりなマーボー丼を彼女に食えと強要させ、しかし『昼寝る』ではパート勤めの秋恵を心配したところで、結局お約束の展開となる彼女への罵倒となるのですが、ここではなぜか、二人の関係がよくなってしまいます。それにしても、何で自分がここまで西村賢太作品を読み込んでいるのかといえば、自身の体験したこともその一部にあるということと、彼自身の分身である北町貫多のしでかした人間関係の破綻が、そのまま自分の人生の人間関係の破綻と重なる部分があるのではなかろうかと思っております。
どこがどうだとは具体的には申し上げませんが、今後も北町貫多の人生の軌跡を追っていきたいとともに、自分自身のことを少しは見つめて聞きたいなと思っている昨今でございます。
- 感想投稿日 : 2013年6月18日
- 読了日 : 2013年6月18日
- 本棚登録日 : 2013年4月2日
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