テロリズムの罠 右巻 忍び寄るファシズムの魅力 (角川oneテーマ21 A 96)

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  • 角川学芸出版 (2009年2月10日発売)
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この右巻では2008年に起こった事件や。グローバル資本主義のもとで帝国主義化するアメリカ、ロシア、中国などの大国各国の政権と国体の変動を解説しております。この本もまた非常に読み応えがあります。

この本は右巻・左巻と同時刊行されたうちの右巻で、ここではロシア・グルジア戦争、アメリカの大手証券会社だったリ-マン・ブラザーズの経営破綻。形を変えた帝国主義を標榜し始めるアメリカ・ロシア・中国などの大国の政権や『国体』が以下に変貌して言ったかということを古今東西の分権を利用しながら詳細に分析されており、新書のサイズながら、ものすごく読み終えるまでに難儀しました。

現在でも閉塞感がはびこり、彼の言うところの排外主義や、具体的に『ファシズム』という言葉は使わないものの、行動様式はファシズムそのものである行動を取る政権や政治化が出始めたことに本当に驚きを隠せない状況になってきていると思いました。僕が興味を持ったのは、第一章『ロシア情勢の変化』及び第二章の『王朝化する帝国主義と「生成するロシア」』では多少事情は違えど、ロシアにおける権力闘争や、プーチン、ペドベージェフがいかにして『二十年王朝』を構築しようとしているのかテレビを見ていても、『ああ、裏ではこういうことが動いているのか』と類推することができるようになったので、読んでよかったなと思いました。

第八章の『雨宮処凛、あるいは「希望」の変奏』では筆者が雨宮処凛さんとの対談を通して、若者の非正規労働及びプレカリアートの問題を考察し、労働力を再生産できないまでに経済的に逼迫した層が生まれることと、ティッシュにしょうゆをかけて食べる人間の層と、100万円の年会費を払い、司法試験の勉強をする人間が同じ国家の中に存在しては「同朋意識」が育ちにくい、と看破する筆者の筆の鋭さに改めて驚嘆しました。

このような状況になっていくと、保護主義政策や排外主義政策を国家がとるということで、今問題になっているTPPの問題もこれは形を変えた「ブロック経済」が復活したと思うと、理解が得ることができました。このようにして「時代」を読み解くことができるのは筆者の外交官時代の経験と、神学を専攻した、という経歴が根幹にあるという話を聞いたことがあります。こういう思考が形成される経緯はすごく興味がありますので、これからも僕は筆者の著作を読んでいくつもりです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2012年2月27日
読了日 : 2012年2月27日
本棚登録日 : 2011年12月26日

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