
家族を救うために単身戦場をひた走る男。作者の父親をモデルにしたこの小説は、半島事情がきな臭い今、ぜひ読んでおきたい小説のひとつです。
作者の伊集院静さんが自分の父親のことを描くのはこれから近いうちに紹介する『海峡』三部作以来なのですが、書いた本人が
『これは面白い。だけど本人が面白いといったものはあんまり面白くない。』
というようなことをおっしゃっておりましたが。この小説。ものすごい分厚いです。最初にこれを見たときには正直読めるんかな、とさえ思いましたが。そんなことは一切気にならずに、一気に読み終えてしまいました。
物語は戦争末期から高度経済成長の直前あたりで。伊集院さんの父親がモデルである高山宗次郎が朝鮮戦争で真っ二つになった半島を部隊に妻の要子のたっての頼みで彼女の弟とその家族を救いに戦場にただ一人向かっていくものです。こういってしまうとそれまでなのですが。宗次郎たちが日本にやってきた経緯や妻の要子との出会い。事業の拡大の箇所を見ると、一人男ののたどった人生が見えてなるほどな、とうならせました。
中盤から後半は宗次郎が戦場となった朝鮮半島での描写になるのですが。これがまた悲惨でしてね。同じ民族が殺しあうというのはむごいことだと思わずにはいられませんでした。結末は読んでいただくとして、今、また半島で火種がくすぶり始めておりますので、彼らの今後の行く末を見守っていくためにも、この本はひとつの道しるべになってくれるのではないのでしょうか?
- レビュー投稿日
- 2011年7月24日
- 読了日
- 2011年7月24日
- 本棚登録日
- 2011年7月24日
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