絵になる子育てなんかない

  • 幻冬舎 (2011年10月26日発売)
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感想 : 41
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解剖学者の養老孟司先生と、フリーアナウンサーで二児の母親の小島慶子さんが語り合う次の時代の親と子の幸せについての対談をまとめたものです。養老先生の言葉と小島アナの「母親の本音」が交錯しております。

この本を作るきっかけとなったのは8年前に解剖学者の養老孟司先生の
「子どもは自然。大人の思いどおりになんかならない。子育ては田んぼの手入れのようなもの」
という子育て論に小島慶子さんが感激し、なんと、養老先生の自宅まで
「養老先生と子育ての本を出したいんです」
と押しかけていったいうことです。彼女の行動力にも非常に驚きましたが、対談の内容がこれまた深いことをさらりと書いていて、かつて子供であった自分も
「そーだよなー。子供が親の思うとおりには育たんわなー。」
と思いながら最後まで読み進めてしまいました。

世の中が変わるなら子育ても変えなきゃいけないですか?
「こんなに頑張ってるのに誰も褒めてくれない」
と思うのはワガママですか? などの「理想の子育て」というものに縛られて身動きが取れなくなっている「いまどきの母親」のいうことを小島アナが代弁すれば、養老先生がこれまた達観された回答で快刀乱麻を断つすばらしい展開をされていて、読み応えのある本でございました。

個人的に一番面白かったのは、養老先生が奉職されていた東京大学医学部でデキる学生というのはこっちが何も教えなくてもできた。逆に自分が教え込んだのは箸にも棒にもかからない学生たちだった、という箇所と、田舎と都会、それぞれに家を持って双方を往復する「旅人」のような生活をするのが望ましい、という箇所でした。都会と田舎に家を持っている人は最近だと仕事部屋で使うマンションのほかにその近辺、たとえば東京で言うと箱根湯本かどこかに書斎をかねた家を持っている、という方はいるそうですが、自分がこういう生活をするには、まだまだ時間がかかるだろうなと思ってしまいました。でも、あきらめてはいませんけれど。

一方の小島アナの話も、自分の近くに住んでいる主婦で、何もかも完璧であるけれど、あるとき
「私のことを何だと思ってるのよ!」
という怒鳴り声が聞こえた、と述懐していたのが妙に心に引っかかっています。理由はわかりませんが。とにかく、育児書としてはもちろん、知的な対談本でもございますので、よろしければぜひ手にとって読んでいただければな、と思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年2月27日
読了日 : 2012年2月27日
本棚登録日 : 2012年2月27日

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