業績主義が魅力だったアメリカの資本主義が、今では著者の故国イタリアのようなクローニイズム(縁故者びいき)の資本主義に堕してしまっているとし、その問題点と解決の方途を論じている。
資本主義の真髄は「競争」にあるが、巨大な力を持ってしまった金融機関や、市場原理から乖離したロビー活動、補助金政治の肥大化など、公正な競争の機会を奪い、鈍化させ、パイを少数者に奪われる現代版クローニー資本主義は至るところにある。
だからといって、資本主義自体を否定することは間違っていて、求められるのは、自由市場を破壊するのではなく救う方向へ向かう「市場派(プロ・マーケット)ポピュリズム」なのだと著者は言う。
ポピュリズムという言葉が持つ否定的なイメージに対して、著者は「確かなポピュリズムの伝統がある国でのみ、ポピュリズム運動は急進的かつ非生産的な政策を避けることができる」(p. 163)とし、アメリカはそれができる国であるという。
このあたり、アメリカが本当にそうなのかな?と疑問を持つが、人民の力を集結して立ち向かわない限りは、クローニイズムには勝てないという問題意識は理解できる。
後者に勝つためには、市場経済の繁栄につながる社会規範・倫理を確立し、また、あらゆるデータを手に入れることであり、さらにそれらはポピュリズム的な動きがないと対抗する力となり得ない。
ポピュリズムのうねりによって、たとえば、社会的規範を逸脱するロビー活動や過度の利得追求の行動を恥ずかしいと思わせ、クローニイズムの動きを是正させることができるからだ。
ある意味、ポピュリズムが果たす役割は、クローニー資本主義を壊し、競争や業績主義に戻すティッピングポイントみたいなものを生み出すことだろうか。
テーマのわりにとても読みやすい本。
- 感想投稿日 : 2013年12月1日
- 読了日 : 2013年12月1日
- 本棚登録日 : 2013年11月6日
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