久々に色んな感情を思い出させてくれ、生きる活力をくれるような、とても沁みる小説だった。
約700頁なうえに活字も小さく(「アンタは京極夏彦か」と感想を書いている方がいたがまさにそれを思った)、自分の中でもトップを争う分厚さだったけれど、泳の冒険にのめり込みすぎて、休むことなく読み終えてしまった。
1人の少年が成長していく様子を丁寧に描いていてとてもいい。中高生にも出会って欲しい作品だし、大人になってからでも大事なことに気付かせてくれる一冊で、個人的お勧めしたい小説ランキングにランクインした。
色んな人(異文化という意味でも、年齢という意味でも)に会うことで刺激・学びを得られ、なんなら手助けも得られることもあるということ、そして夢ややりたいことは口に出していくと実現に向かって進んでいくということを教えてくれて、前向きになれる。
恵まれた環境で育ち金銭にも不自由せず、帰宅部で大学もエスカレーターな泳が冒頭で感じていた、何をするわけでもない日々や将来に対する漠然とした絶望感とか、楽しくもなさそうに日々働く大人に対する感情とか、親という存在をめんどくさいと思う気持ちとか、それでも何かやりたいという想いを秘めているところとか、自分の高校生時代と被りすぎて(みんなそうなのかもしれないが)、そうだよねそうだよね、と思いつつ、でもそれこそ大人って楽しいよって、そんな風に思っている現中高生たちに教えてあげたいと思った。
一方で、自分で“やりたい“と思ったことでないと一歩踏み出すことってできないだろうなと改めて感じたので、自分の子どもたちが“やりたい“ことが見つかった時に全力で応援できる体制を整えておきたいとも思った。
泳が自分の名前に意味を見出してウキウキしているところ、年相応の可愛さがあってよかったなぁ。
あとは泳と二階堂の関係は勿論、泳と山下との関係もいい。男の子のぶつかり合って仲良くなるところ痺れるし憧れる。
『何かが流れ出す。自分が動いているのか、周りが流れているのかわからない。けど、確実に何かが変わっていく。その手応えがある。水をぐんと蹴って、身体が進む感覚。それが今、俺を動かしている。』
ここがとても好き。この感覚を、感じることができる人生でありたいし、泳のように終わらない波に乗りたい。
- 感想投稿日 : 2024年5月13日
- 読了日 : 2024年5月12日
- 本棚登録日 : 2023年4月26日
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