権威と権力――いうことをきかせる原理・きく原理 (岩波新書 青版 C-36)

著者 :
  • 岩波書店 (1974年3月28日発売)
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感想 : 43
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「権威と権力」とは古くて新しいテーマであり、1974年初版ながら、今だに版を重ねている良書。精神科医と高校生の対話を通じて、権威とは何か、権力とは何かについて少しづつ明らかにしていく。本書では、権力は無理やり他人を動かすのに対して、権威は他人が自発的に動くのを促すものとしている。現代では、一昔前と比べるといろいろな権威が失われており、様々な場面で人々をまとめるのに苦労しているのは周知のとおりである。本書が出版された当時は、マスコミの影響で政治家・役人・大学教授・医師・学校の先生などの権威が失墜したことが指摘されているが、その後インターネットの普及によりその傾向はますます顕著になり、今や大手マスコミ(テレビ局と全国紙)の権威すら無いに等しい。本書では「天皇制と権威」という避けて通れない問題も考察しているものの、社会党や共産党が強かった時代の名残からか、今読むとちょっと古臭い議論にみえる。
本書を読んで、改めて自分の周りを見渡してみると、やっぱり権威のある人はほとんどいない。私の恩師は例外的に(私から見ると)権威と権力を持ち合わせていて、公職を退いた現在も近くにいると権威が感じられる稀有な人である。この恩師の成功を願って、私がみずから率先して太宰府天満宮まで参拝に行ったくらいの権威がある。一方、私が勤めている会社には、役員・管理職・一般社員のどこを見ても、権威者がいないことを痛感させられる。それぞれの職制に与えられた権限(≒権力)により、無理やり動かされている感じが半端ないし、上の権威がゼロだから、上のために率先して何かをする気にまったくならない。こんな組織で出世してもロクなことがないし、せめて自分が平穏無事でいられるように振る舞うしかない。まあ、今時、どこの組織もこんなものだろうけど。本書に出てきた高校生は、まさにこのような状況を嘆いているのだな…。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネス・実用
感想投稿日 : 2017年2月14日
読了日 : 2017年2月11日
本棚登録日 : 2017年2月12日

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