科学万能主義がはびこっていたバブル末期(本書の原著は1990年刊)に、科学の「真理性」と「客観性」にダメ出しを喰らわせた、ある意味で凄い本。とはいっても、決して非科学的な神秘主義を唱えているわけではなく、「真理性」や「客観性」を追求しなくても科学は構築できると主張しているだけなので、バブル期ならいざ知らず、現代では多くの人が本書の内容に納得できると思う。まあ、それだけ現代科学への信用が失墜しつつあるということでもあるのだが…。クーンやポパーやファイヤアーベントの難しい本を読まなくても、その辺の話題が一通り押さえられているのはありがたい。また、著者によれば、科学と宗教は、物語の記述形式こそ違うものの、人々がそれを信じるメカニズムは同型だと説明している。つまり、「科学教」という表現は、皮肉でもなんでもなく、言い得て妙なわけである。繰り返しになるけど、1990年に一般向けにこれを書いたというのは、やっぱり凄いと思う。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
科学・技術・知財
- 感想投稿日 : 2013年10月6日
- 読了日 : 2013年10月1日
- 本棚登録日 : 2013年10月5日
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