「テロリスト」がアメリカを憎む理由

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  • 毎日新聞出版 (2001年11月1日発売)
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感想 : 6
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9.11の時にツインタワー近くに住んでいたジャーナリストの著者が、あの惨劇のわずか2か月後に著した本。今となっては定説となっていることや、ビンラディンについて誰もが知っているようなことを、「あの時点から2か月」という短い期間でこれだけ端的にまとめ、本に仕立て上げていたということにまず拍手。9.11以前からビンラディンや「テロリスト」たちに深くかかわった報道をしてきた、著者ならではの功績です。

タイトルで、「テロリスト」とわざわざカッコ書きにしてある理由が、冒頭で述べられてます。
簡単に言うと、これも今は常識に近いですが「テロリストは、ある人たちにとっては自由の戦士である」という意味合いがあるのをきちんと整理しておくためと、さらに「ブッシュが世界をアメリカの敵か味方かに二分するために、テロ=卑劣な行為というイメージ戦略を用い、自らを正義の味方とした」というトリックと一線を画すため、としています。このあたりも著者の知性が出ていると言っていい。

中盤以降は、アメリカを含む西欧諸国が中東に対して行ってきた歴史的なお節介がどういったものだったのかについて、ざっくりと見ていく形になっているので、その辺はこの地域に詳しい人なら読み飛ばしてしまっても好いと思います。

全体を通じ、「テロリスト」たちがアメリカに対して抱いている憎しみや怒りを、歴史的・宗教的な観点から丁寧に省察した本となっています。イスラエルとパレスチナの問題、イスラム教に「背信」したとみなされるサウジアラビア王政のアメリカへの服従(「テロリスト」から見れば屈服)、異国において自国の軍が直接的にあるいは間接的に行なってきた殺人に対してアメリカ人があまりに無関心であったことへの怒り、そういった部分を包括的に理解するためには、ページ数は少ないものの有益な本です。

今、シリアへの攻撃に対しては多くのアメリカ国民が「No」と言っています。この世論も、仮にシリアがアメリカ本土で化学兵器を使ったり、アメリカの領土(もしくはイスラエル)にミサイル打ち込んだりしたら再びガラっと変わって好戦モードに突入するのかもしれませんが、少なくともブッシュ時代の稚拙なレトリックに惑わされるような状態ではない、というのが救いと言えば救いなんでしょう。
いい加減、「テロリストと戦う正義の味方」としてのマッチョなアメリカ、という衣を脱ぎ捨ててくれれば、多少は世界がすごしやすいのではないかなどとも、読み終えた後には思ってしまうのです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 国際
感想投稿日 : 2013年9月20日
読了日 : 2013年9月7日
本棚登録日 : 2013年9月10日

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