新書アフリカ史 (講談社現代新書)

制作 : 宮本正興  松田素二 
  • 講談社 (1997年7月18日発売)
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感想 : 31
4

アフリカ全体についての通史
人類の誕生から21世紀直前までを対象に政治史・交易史を中心にアフリカの歴史を概観する。

本書ではあまり一般には知られていないアフリカの古代から中世についても光を当てている。
口頭伝承や考古資料といった非文字史料や交易のあった外世界の文献を用いて、徐々に明らかになっている古代・中世アフリカを紹介している。
そこには「暗黒大陸」としてのアフリカのイメージとは異なる、ダイナミックな人々の営みが描き出されている。
一方で大航海時代以降、大陸が徐々に植民地化されていく様子や欧州支配からの独立といった近代から現代への歴史についても綿密に描写されている。

この本で描かれている歴史はあくまでも「アフリカにとっての歴史」である。特に近代以降の歴史叙述についてこのことを感じることができた。
アフリカの歴史は近代世界システム論の一部としてや民族主義の勃興といった全世界的なトピックのもとに語られる事が多かった。
しかし、本書ではこのようなトピックの中で起こったアフリカの変化を描き出している。
奴隷貿易の中で発生していたアフリカ内部での「狩るもの」と「狩られるもの」の関係、そして奴隷貿易がアフリカの政治経済に影響を与えたのか。
また奴隷貿易禁止後に構築された植民地支配体制に対して展開された抵抗運動の様々な展開。
アフリカの「民族運動」がより下位の「民族運動」を抑圧して行く様子。
こういったアフリカ内での諸問題は連なった一つの歴史の流れの中に位置づけられる。
以上のようなアフリカを問題の中心に据えた歴史分析は、私たちのアフリカに対する「近代世界システムの犠牲者」や「第三世界」といったステレオタイプな視線からの脱却を促し、「歴史の大きな物語」に覆い隠された現代アフリカの真の問題点を炙りだしてくれる。

「新書アフリカ史」のもう一つの読みどころは中南部アフリカの古代史・中世史であろう。
口頭伝承で編まれた歴史は独特の時空感覚を持っている印象を受ける。
それはすべての事象を関連付け整合性をもたせる文献による歴史とは異なる。
時間の流れや長い距離を飛躍するもっと大きな歴史が見えてくる。
そして環境が人間生活にどのような制約を加えていたのか、人類は自然の大いなる力にどのように適応していったのか。
「銃・病原菌・鉄」では地理と文化の関係が考察されていたが、アフリカにおいても同様の分析が成り立つことが本書を読むと理解できるのである。

細かなトピックとして現代アフリカを考える上で役に立つであろうことはサハラ砂漠をめぐる歴史の叙述である。
サハラで展開される歴史がいかに「国境」という概念を踏み越えているかを認識することはアフリカ北部・西部で発生する政情不安(たとえばマリなど)を理解する上で大きな助けとなる。

少々気になった点としては、本書では地理が大きなファクターとなるがアフリカについて本当に初学者であった私には地図なしで読むには少々辛かった。
もっと頻繁に地図が出てくるか、巻頭または巻末にまとまった地図があると理解が進んだように思える。
また残念なことであるが本書の記述は20世紀末で終了している。21世紀に入るとアフリカの経済発展は軌道に乗り始める事例も出てきている。
南アフリカは注目新興国の一角に数えられるようになったし、ナイロビの都市化は益々進む。
湖水地方の正常も徐々に安定化に向かっている。こうした新しいアフリカの動きの背景についても知りたかったがそれはまた別の書に譲ることとなっている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2013年2月8日
読了日 : 2013年2月3日
本棚登録日 : 2012年10月26日

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