火車 (新潮文庫)

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本棚登録 : 23004
レビュー : 2319
著者 :
aswさん  未設定  読み終わった 

私はめったに、「この本読んだらいいよ」と人には勧めません。でも、この本を読んだことがない人は是非読んでみてください。単なる連続殺人や派手なトリックではなく、深く考えさせられます。
感想を一言で言うと、「スゴイ!」です。もう、完全に脱帽です。一つ一つの文章自体はひねった比喩が使われているわけでもなく、淡々と書かれているのに、冒頭から引きこまれます。言葉の選び方にも彼女の洗練されたセンスが表れていますが、間の取り方や切り替えが絶妙なんです。
ミステリーって、状況や登場人物を把握しないといけないですし、手がかりや伏線を見逃すまいと読むので、小説の最初の部分は面倒くさいのです。私が洋物ミステリーがあまり好きでない理由もここです。登場人物の慣れない横文字名を覚えていくだけで、疲れてしまいます。
冒頭に大きな爆弾がドッカーンと落ちてそのままエンディングまで見逃せない、という東野圭吾さんのスタイルと、すーっとクレッシェンドがかかっていく宮部さんのスタイル。他人のアイデンティティを乗っ取る話は、東野さんの「幻夜」にもありました。二人とも、賢い悪女を描くのがお上手。東野さんが書く悪女は、得体の知れない女で、よく男が翻弄されてます(笑)。
この本のテーマは「借金がいかに人生に影響するか」です。これから読む人のために詳しく書きませんが、印象に残った箇所は、自己破産が急増した背景には、昭和50年代後半のマイホームブームがあったという部分です。家を持つのが、一般市民であるサラリーマン達の一生をかけて実現する夢でした。これはまさにここ数年アメリカやイギリスが経験した不動産バブルと、払いきれなくなったローンが原因の破産を思い出させます。また、蛇がなぜ何度も脱皮するのか、という部分も面白かったです。今度こそ足が生えるはず、と思っていると。
宮部さんがあとがきで、「大阪弁のチェックは東野圭吾さんに、大阪の街案内は高村薫さんにお世話になりました」とあり、私の大好きな作家達と付き合いがあることを知って嬉しくなりました。宮部さんは歴史小説も書かれているので、今度読んでみようと思います。

レビュー投稿日
2014年9月17日
読了日
-
本棚登録日
2010年9月5日
6
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