素晴らしい本だった。でも、この評価は、やや偏りがあるかもしれない。というのは、著者も私も、国外の生活が20年ほどで、日本をこよなく愛する日本人だという共通点があるからだ。
前半は、12歳からアメリカで暮らした著者が、狂おしいほどの情熱を傾けて読んだ数々の本の書評である。昭和初期から戦後にかけての日本内外の名作が中心である。読書にのめりこんだ著者は、日本語にものすごいこだわりを抱いて生きることになる。
文章は米原真里さんのようだが、米原さんのほうが柔らかく、水村さんは学術的である。どちらも帰国子女だからこそ、美しい日本語に並々ならぬ執着がある。
後半は、自分が小説家になり出版した著作の紹介や成り立ちなど、また美しいが消えゆく日本語をどうやって守っていくか、そしてメンターとなる日本の作家などについて書かれてある。本書で紹介されている本が次々と読みたくなる。
海外に長く住み、私は日本語の能力が衰える一方だが、これだけの日本語が書ける著者には感服である。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2016年10月18日
- 読了日 : 2016年10月18日
- 本棚登録日 : 2016年10月18日
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