新装版 坂の上の雲 (6) (文春文庫)

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本棚登録 : 3809
レビュー : 198
著者 :
あつこさん 小説   読み終わった 

司馬遼太郎が,現在の日本について資料を集めて分析したら,どのような評価を下すかが気になる。一国の重責を担う人物は,それにふさわしい器と運を持っていなければならず,そうでない人間が分不相応な地位に着くことは,本人だけでなく,その組織の構成員,国にあっては国民を不幸にするということがひしひしと伝わってきた。今の日本に通じる部分が多い。ただ,解決策が提示されているわけではない。それは,現在のわれわれが考えなければならないのだ。

ちょっと「右は余談」というのが多い。戦争についての分析で興味を持てない部分も。

「黒溝台会戦の戦闘経過の惨烈をつぶさにみてゆくと,かれら東北の若者達が全日本軍をその大崩壊から救ったその動態のひとつひとつを記述したいという衝動を抑えきれない。」
「が,歴史というものは,歴史その者が一個のジャーナリズムである面を持っている。立見尚文は東北のいろり端でこそ『軍神』であったが,他の地方ではほとんど知られていない。旅順における乃木希典は,最後の一時期にいたるまでは史上類のない敗将であり,その不幸な能力によって日本そのものを滅亡寸前にまで追いつめた人であったが,戦後,伯爵にのぼり,貴族でありながら納豆売りの少年などに憐憫をかけるという,明治人にとって一大感動をよぶ美談によって浪曲や講釈の好材になり,あたかも『義経記』における義経に似たような幸運をもつことができた。
 乃木希典はそういう点でめぐまれていたが,立見尚文は乃木の場合のように長州閥の恩恵を可分に浴するということがまったくなく,何度かふれたように旧幕系の人であり,明治陸軍のなかでは孤独な存在であった。」

「『専制国家はほろびる』
というただ一つの理由をもって,この戦争の勝敗のよそうにおいて日本の勝利のほうに賭けたのは,アメリカ合衆国の大統領セオドア・ルーズヴェルトであった。・・・
 二流若しくは三流の人物(皇帝)に絶対権力をもたせるのが,専制国家である。その人物が,英雄的自己肥大の妄想をもつとき,何人といえどもそれにブレーキをかけることができない。制度上の制御装置をもたないのである。」

レビュー投稿日
2011年6月5日
読了日
2011年6月5日
本棚登録日
2011年6月5日
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