トゥモロー・アンド・トゥモロー・アンド・トゥモロー

  • 早川書房 (2023年10月6日発売)
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感想 : 67
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★5 秀才ゲームクリエイターの愛と友情の物語 #トゥモロー・アンド・トゥモロー・アンド・トゥモロー

■はじめに
子どもの頃、友人と一緒にファミコンで遊んだ日々が懐かしい。スーパーマリオ、ゼビウス、ドルアーガの塔、ドラゴンクエスト…数々の名作を思い出す。

大学生の頃はアルバイトで稼いだお金を全て話題作につぎ込み、休み前は友人宅で夜通しで対戦ゲームに入れ込み、初めてつないだオンラインゲームで、見も知らずの外国人と朝までチャットに興じたり。

今ではあまりゲームに時間を割くことは少なくなりましたが、私も本作の登場人物と同じように、ゲームが大好きなひとりなんですよね。ゲームクリエイターたちの物語があると知り、ぜひ読んでみたいと思いました。

■あらすじ
ハーバード大学に通っているサムは、ある日幼馴染のセイディと出会う。彼女もMITに通う大学生であった。彼らは幼い頃にスーパーマリオを楽しんだ仲だった。ゲームに対する愛情とスキルを持っていた二人は、サムの友人であるマークスと共に、自分たちだけでゲーム制作に挑戦する。そして完成した「イチゴ」というゲームは世界中で大反響を呼ぶことになるのだった。
彼らはさらに面白いゲームを作り続けるはずだったのだが、少しずつ価値観がずれ始めていき…

■きっと読みたくなるレビュー
友人、親友、仕事仲間、恋人、夫婦、家族…人と人との繋がりは様々な種類がある。そして人の環境は常に変化し、日々生活をしながら年齢も重ね、さらに価値観や経験値もアップデートされてゆく。本作はゲーム作りと会社経営を通して、人間の色々な絆の形を描いた作品です。

本作は粘り気のある強い文章で綴られており、読者の胸を締め付ける気の利いたセリフが印象的。読めば読むほど、人の心の深みに入ってしまう感覚に陥ってしまい、感情移入が半端ないのよ。

様々な過去の経験から、少しだけ偏った性格を持ち合わせた彼ら。大人が端から見ていると、もっと相手の気持ちを考えて仲良くやれよって思うかもしれませんが、それだとモノづくりなんて成功しないんですよね。個々の想いと情熱をぶつけることで、はじめて最高傑作が生みだされる。

そして出会った頃から異性としても惹かれ合い、誰よりも相手を思いやる気持ちはあるにも関わらず、いつも喧嘩が絶えない。相手のことは誰よりも知っているのに、自分と相手の間にある食い違いを理解し、それを調整しようとする意思がない。友情も愛情も超えた精神的な部分でつながっているのに、決して幸せにはならない。ゲーム制作という夢が実現して、経済的にも成功しているのに…

ゲームでハッピーエンドを迎えるのは容易ですが、人が幸せになるのは、本当に難しいですね。しかし彼らの努力はしっかり目に焼き付けました。「よくがんばったね」と、彼らを抱きしめたくなる、そんな素敵な作品でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー以外その他
感想投稿日 : 2023年12月27日
読了日 : 2023年12月25日
本棚登録日 : 2023年12月25日

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