久遠の島

  • 東京創元社 (2021年10月19日発売)
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本棚登録 : 195
感想 : 17
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〈オーリエラントの魔道師〉シリーズ。
本書は、シリーズ第一作である『夜の写本師』に連なる物語となっております。

世界中のあらゆる書物を読むことができる<久遠の島>。
そこを訪れた他国の王子・セパターの私利私欲により、島の禁忌が破られ、何と一夜のうちに島は沈んでしまいます。
奇跡的に生き残ったヴィニダル、シトルフィ(with姫山羊のチャギ)、そして一足先に島を出ていたヴィニダルの兄・ネイダル。
一人の人間の悪意により故郷を失った若者たちの運命はどうなっていくのでしょうか・・。

島が没してしまった直後は、離れ離れでお互いの消息もわからないままの彼らでしたが、過酷な旅を通じて運命を切り拓いていく、その成長が眩しいです。
とりわけヴィニダルは密林や砂漠を延々と彷徨う羽目になってボロボロの状態でしたが、それを乗り越えただけに一皮も二皮も剥けたように思います。
そんな3人が写本の都・パドゥキアでようやく再会できて、それぞれの才能を活かすべく本創りの修行に励む場面は楽しくワクワクしました。
写本の描写は勿論、本に使うインクや羊皮紙のできる過程も興味深く、一冊の本がどれだけ手間暇かけて創られているのか・・・書物の尊さを実感します。
そして、忘れてはいけない諸悪の根源・セパターへの復讐が遂げられた時は溜飲が下がる思いでした。
読み応えガッツリで、物語の世界に浸れる本書。ラストの一行を読んで、改めて『夜の写本師』を読み返したくなりました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2022年読了分
感想投稿日 : 2022年8月21日
読了日 : 2022年8月21日
本棚登録日 : 2022年8月21日

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