誰も戦争を教えてくれなかった

著者 :
  • 講談社 (2013年8月7日発売)
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1985年生まれの社会学者である筆者当時28歳は「僕にとって戦争は、あまりにも遠いものだった」と始める。そんな筆者が「戦争の残し方」の違いに注目し、博物館をめぐりそこに残されている「記憶」に関して考察をしていく。様々な国の「戦争博物館」を訪れた筆者自身のフィールドワークが土台となっているため、非常に引き込まれる1冊。

 この本の第1章で、気付かされたことは「博物館」というものの立ち位置だ。私自身は、旅先で博物館を巡ることが好きだ。しかし、これまで博物館の展示をただ受け取るだけで、その展示のあり方に注目をしたことはなかった。筆者は言う。「博物館はありのままの過去や、たった一つの真実を展示する場所ではない。博物館に展示されるもの、展示されないものの線引きは常に恣意的であり、そこに展示されないものは、その世界に存在しなかったことになる2728頁」。つまり、博物館という場所には、その国の「思い」が映し出されているといえる。

 また、最後には筆者独自の視点でまとめられた「戦争博物館ミシュラン」が載っており、興味深い。そこには、シンガポールの博物館も3つ紹介されているため、現在シンガポールに住まわせてもらっている一人として、一度訪れなければならないと思わされた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 古市憲寿/社会学
感想投稿日 : 2017年7月9日
読了日 : 2017年2月24日
本棚登録日 : 2017年7月9日

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